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村澤典知「時事奔流 経営とマーケティングのこれから」

なぜ商品少ない&売らないお店が成功?多いと売れない?蔦屋家電の逆張り戦略

文=村澤典知/インテグレート執行役員、itgコンサルティング 執行役員

店舗からモノを減らす時代へ

なぜ商品少ない&売らないお店が成功?多いと売れない?蔦屋家電の逆張り戦略の画像1「Thinkstock」より

 「できる限り多くのモノを置くことで顧客の選択肢は増え、売上が増える」ということは、長らく当たり前のことのように考えられてきた。これを突き詰めた姿のひとつが、ドン・キホーテやヴィレッジ・ヴァンガードだろう。店内中にさまざまなジャンルの商品を大量に陳列することで、売上を上げることに成功した。

 しかし、最近はこれとは正反対の現象が起こっている。あえて実店舗ではモノを減らし、さらにはモノを売らない戦略をとることで成功を模索する企業が出始めている。

厳選した少数のモノを販売する、蔦屋家電

 今年のGW(ゴールデン・ウィーク)に東京・二子玉川にオープンした「蔦屋家電」は、一般的な家電量販店とは異なり、冷蔵庫や洗濯機、テレビなどの大量の商品が並んではいない。蔦屋家電を企画・運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブの増田宗昭社長は、あるインタビューのなかで、このねらいを次のように語っている。

「もはや物量で勝負する時代ではなくなっている。これだけモノがあふれている時代に、モノだけ並べられても、人は何の幸せを感じない。(中略)“モノ”があるのではなくて、“モノ”を通じて“生活”を提案するということ。ここが、家電量販店との大きな違いです。提案したいライフスタイルに必要な商品を選んで、ライフスタイルが伝わるように置いて売っている」(『TSUTAYAの謎 増田宗昭に川島蓉子が訊く』 / 川島蓉子著、日経BP社 2015年)

 つまり、蔦屋家電は、これまでの家電量販店のように店舗に大量の商品を置いて売上を増やすのではなく、独自の視点でセレクトした少数の家電のみを置く、逆張りの戦略を採っていることがわかる。商品を少なくする代わりに、店舗内にカフェや休憩スペースを併設してくつろげる環境を用意し、写真・ネットワーキング・音楽・映像・食・美容・旅行などさまざまな専門分野に詳しいスタッフ(コンシェルジュ)を揃えた。なんでも相談できる体制を整えることで、店舗の魅力を高めようとしている。

店頭ではモノが買えない、Bonobos(ボノボ)

 店頭に商品を厳選するどころか、店頭では一切商品を売らないというユニークな例もある。それが、米国のメンズアパレル専門店「Bonobos(ボノボ)」だ。この企業は,ファッションが好きだが実店舗での購入が煩わしいと感じていた米スタンフォード大学卒の創業者の手によってシリコンバレーで生み出されたブランドだ。

村澤典知

村澤典知

インテグレート執行役員、itgコンサルティング執行役員。一橋大学経済学部卒。トヨタ自動車のグローバル調達本部では、調達コスト削減の推進・実行を中心に、新興国市場での調達基盤の構築、大手サプライヤの収益改善の支援に従事。博報堂コンサルティングでは、消費財・教育・通販・ハイテク・インフラなどのクライアントを担当し、全社戦略、中長期戦略、マーケティング改革、新規事業開発、新商品開発の導入等のプロジェクトに従事。A.T.カーニーでは、消費財・外食・自動車・総合商社・不動産・製薬業界などの日本を代表する企業のグローバル成長戦略、中期経営計画、マーケティング改革(特にデジタル領域)、M&A、組織デザイン、コスト構造改革等のプロジェクトに従事。2014年より現職。大手メーカーや小売、メディア企業に対し、データ利活用による成長戦略やオムニチャネル化、新規事業開発に関する戦略策定から実行までの支援を実施。


株式会社インテグレート

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