闇営業問題で謹慎処分を受けていた11人の吉本興業所属芸人。そのなかでスリムクラブやくまだまさしなど一部芸人が19日、ルミネtheよしもと(東京)でステージ復帰した。
一連の騒動では、吉本が約6000人にも上る所属芸人と書面での契約書を取り交わしていないことなども問題視されたが、先月24日には定例記者会見で公正取引委員会の山田昭典事務総長が「契約書面が存在しないということは、競争政策の観点から問題がある」と発言。吉本は8日、新たに設置した経営アドバイザリー委員会の初会合を開き、「所属する全芸人と『共同確認書』という書面の契約を結ぶ」「従来のマネジメント契約に加えて新たに『専属エージェント契約』を導入して、芸人が2つの契約形態から選べるようにする」と発表した。
こうした動きを、ほかの芸能事務所も注意深く見ているという。
「日本では所属タレントと契約書を交わしている事務所なんて、ほとんどありませんよ。契約書がないことが問題だと言い出したら、ほとんどの事務所に調査が入ることになりかねない。吉本のせいで、事務所はすべての所属タレントと書面で契約書を取り交わさなければならないという流れになれば、本当にいい迷惑。そもそも、詐欺グループに直営業して金銭を受け取る行為がどれだけ問題あるかなんて、社会人なら常識としてわかるはず。芸人たちが社会のルールを守らなかったことで受けた制裁を、会社の問題にすり替えるなんて、おかしな話ですよ」(芸能事務所幹部)
また、テレビ局関係者も言う。
「芸能事務所は、所属タレントと書面で契約書を交わしていないところがほとんどです。例外的に給料制で仕事がない若手の生活費も保証しているホリプロなどは、そのあたりはきちんとしているようですが。芸能界全体の慣習に行政のメスが入れば、これまできっちりとクリーンにやってきた事務所と、そうじゃない事務所が浮き彫りになって、これまでの力関係が大きく変化するかもしれません。今はどこの事務所も、いつ行政が本気で動き出すか、その動向を静かに注視している状況です」
これまで、タレントが所属事務所との契約において不当に不利な条件で働かされることを強いられるなど、労働者としての権利が守られていないという指摘は、しばしばなされてきた。たとえば俳優の小栗旬は、アメリカのエンターテインメント業界を手本にして俳優の労働組合をつくるべきだと訴えて続けている。
先月には、元SMAPメンバーの「新しい地図」の3人を起用しないようにテレビ局に圧力をかけた疑いがあるとして、公正取引委員会が調査の上で注意をしていたことが発覚したが、芸能界におけるコンプライアンスをめぐる動きが、しばらく注目を集めそうだ。
(文=編集部)