日本ガイシが自動車部品の価格操作による反トラスト法(独占禁止法)違反(カルテル)の疑いを認めた。8月19日付米司法省HP発表資料によると、同社は司法取引に応じ、5210万ドル(約63億円)の罰金を支払うとされている。
日本ガイシは競合他社と共謀してスパーク・プラグなどの自動車部品で不正な入札を行い、顧客である自動車メーカーへ損害を与えたという。2000年7月から10年2月までの不正が確認されている。ちなみに日本ガイシの9月4日付発表では、罰金額が6350万ドル(約78億円)となっている。司法取引により9月3日に合意したものだという。8月19日以降、さらに問題が見つかった可能性もある。
悪くない対応
今回の司法取引決定に至るまで、日本ガイシの対応は悪くない。まず4月時点で、15年3月期に「関連特損93億円」を計上したが、今回の罰金支払いに備えたものであった。司法取引では78億円で決着がついたので、前出9月4日発表のリリースでは、「今回の司法取引合意による罰金額の決定を受け、当該引当金との差額約15億円を営業外収益として計上する予定です」としている。
これを受け、株価は発表前日3日から8日まで8%ほど下げたが、米司法省が8月に発表していたこともあり、司法取引の金額が決定したことで悪材料出尽くしとなる可能性がある。「変更しない」とした16年3月期決算予想では売上高4200億円(対前年11%アップ)、最終利益は480億円(対前年比16%アップ)という好調ぶりだ。これに上記差額15億円が足し上がる可能性があるのだ。
経常利益率も16.4%と素晴らしい予想だが、もし「談合してまでそんなに儲けたかったのか」という批判が上がることになれば、名門企業の名誉も地に墜ちてしまうだろう。
米国で禁錮刑の可能性も
本件で特異なのは、当該期間に日本ガイシのセラミックス事業本部長を務めた前社長ら3人が、司法取引で免責されなかったもようだということだろう(2015/9/4日本経済新聞)。本件調査に対して同社側が電子ファイルを削除したり、幹部のコンピューターを取り換えたりして捜査を妨害した疑いがあり、悪質だと判断されたという。
反トラスト法で免責されない場合は、米国で起訴となり有罪の場合、禁錮刑などがありうる。それが例外的かというと、矢崎総業の4人が11年に禁錮刑の判決を受けたのをはじめとして、実は結構存在する。外国人の禁錮刑は2年が最長と決められている。