2020年の東京オリンピックに向けて、タクシーが大変身するかもしれない。
現在、タクシー業界は国土交通省と共に「新しいタクシーのあり方」を検討している。タクシーはほかの交通機関と比較して割高感などがあり、輸送人員は減少の一途を辿っているためだ。
タクシー事業は人件費の割合が高く、運転手の賃金が歩合制となっていることが大きな特色だ。しかし、輸送人員が減少する中、売り上げ増加を狙って車両数を増加しても、パイの奪い合いになってしまい、結果的に不況が長期化している。
こうした状況が、賃金の低下など運転手の労働環境の悪化につながっている。タクシー運転手の平均年間所得は302万円で、全産業の536万円を大きく下回っている。
また、長時間労働や事故・強盗などのネガティブなイメージもある。運転手は、97.7%が男性で、法人タクシーの運転手の平均年齢は58.7歳と全産業平均の42.9歳を大きく上回り、高齢化が進んでいる。
多くの課題を抱える中で、タクシー業界は需要の創出・拡大を図るべく、対策を検討している。その中心となっているのが、「増加する需要に対応する」「運賃設定の柔軟化による潜在需要の掘り起こし」「社会貢献」の3つだ。
増加する需要の最たるものは、観光需要だ。現在、日本には多くの外国人観光客が訪れており、各産業に好影響を与えている。タクシー業界も、この流れをうまく取り込むことを検討しているのだ。特に、東京オリンピック開催に伴う大きな観光需要の発生が見込まれている。
そこで、タクシー業界としては、例えば空港などから都心部までの「定額運賃タクシー」の導入を拡大する意向だ。外国人観光客が空港などから都心部に出る際、わかりやすい料金設定で安心して利用できるようにすることで、来日者の利用促進を狙う。
さらに、各自治体の観光部門などと連携し、地域の歴史・観光地の情報に対する検定・研修を行い、「観光タクシードライバー認定制度」などを創設する。加えて、運転手に対する外国語研修を実施し、実務での外国語対応の促進を図ると共に、東京オリンピックに向けて多言語に対応した翻訳機をタクシーに導入する。
また、スマートフォンによるタクシー配車アプリの導入・普及を進めることで、効率的な配車を可能にする施策も検討されている。