優越的な地位のある者が、それを利用して不当な利得を得る(個人データを第三者に販売するなど)ことは、まず独占禁止法の精神にもとることである。さらにその利得を、源泉となった資源(個人データ)を供出した個人に配分、還元していないという点で、極めて反社会的だ。
「通信の秘密」の侵害行為だ
新聞などの報道では指摘されていないが、今回の問題はリクルートキャリアの不当所得としての経済的、ビジネス的な問題に加えて、「個人の通信の秘密」を侵害する大きな要素、すなわち社会的な問題という要素があると私は見ている。大げさではなく、憲法21条が定める「通信の秘密は、これを侵してはならない」という条項を侵犯する可能性がある愚挙だ。
憲法が定める「通信の秘密」は、通信の秘密を保障・保護するもので、その対象は当初は信書などを想定していたが、社会の変化に伴って拡大してきた。
「手紙や葉書や封書だけではなく、電波・電報・電話・電子メール・インスタントメッセージなどの秘密を含む、広い意味に理解されている。」(佐藤幸治『現代法律学講座(5)憲法第3版』青林書院、1995年、576頁)
IT時代において、私たちが「通信」する相手は、人よりもグーグルなどのネットサービスのほうが多くなっているのではないか。たとえば、中国で「天安門事件」や「香港動乱」などとネットで検索した場合、閲覧に制限がかかったり、中国政府によって検索した人になんらかの不利益がおよぶ懸念もある。よって「何を検索するか」「何をネットで見るか」という情報は、憲法上の「通信の秘密」の対象として保護されるべきだと私は考える。
「リクナビDMPフォロー」というサービスは、「通信の秘密」を侵害することで利得を得た、という構造だと理解すべきで、罪が重い。
親会社の監督責任は
多くの大学の就職課が、学生の個人データを不当に利用・販売されたと憤慨していると報じられている。
「関西学院大学キャリアセンターは『現在の状況を受けて調査している段階だが、少なくとも今年は学生に(リクナビを)紹介する予定がない』と回答した。中央大学キャリアセンターは『今後も一切紹介しない』と厳しい判断を下す。同センターの池田浩二副部長は、『信頼関係がなくなった。学生を守る立場として、たとえ1件でも問題があれば、学生、父母に安心してもらえないので紹介はできない』と憤る」(9月1日付ZAKZAK記事より)