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塚田農場、実は閉店ラッシュで苦境に陥っていた…割高さ&斬新なサービスが敬遠

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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塚田農場の店舗(「Wikipedia」より)

 居酒屋「塚田農場」の閉店が相次いでいる。7月は上野店、田町店、イオンモール幕張新都心店、青葉台店、大宮南銀座店の5店舗を閉めた。6月にも6店、5月も5店を閉鎖している。塚田農場の閉店ラッシュが続いている。

 塚田農場は地鶏を売りとする居酒屋チェーンで、エー・ピーカンパニーが運営する。「宮崎県日南市 塚田農場」「北海道シントク町 塚田農場」など、各地にある養鶏場の所在地を冠した店舗を展開している。

 塚田農場は2007年8月、東京都八王子市に1号店がオープン。本格的な地鶏料理が受け、全国に地鶏ブームを巻き起こした。同社は勢いに乗じて出店攻勢をかけた結果、塚田農場を主体とした地鶏モデルの店舗数は、16年3月期には150店(国内)を超えるまでになった。だが、競争の激化で17年3月期からは減少傾向に転じ、店舗数は減っていった。今年7月末の店舗数は118店となっている。最盛期からは2割以上減った。

 看板業態の塚田農場の衰退で、同社の業績は厳しい状況が続いている。直近本決算の19年3月期連結決算は、売上高が前期比4.5%減の245億円、営業損益が2億9800万円の赤字(前期は3億 3000万円の黒字)だった。塚田農場が主力の国内外食事業の既存店売上高が7.1%減と大幅に減ったことが響いた。

 塚田農場は先進的な施策を数多く打ち出してきた。しかし、今やどれもが陳腐化している。塚田農場は地鶏居酒屋の先駆けとして大いに注目された。だが、「山内農場」など類似店が増えたことで次第に埋没するようになり、存在感は低下していった。また、「鳥貴族」など手頃な価格で鳥料理を提供する居酒屋が増えたことで、価格がやや高めの塚田農場は敬遠されるようになった。

 来店回数に応じて肩書が変わる「名刺システム」で注目を浴び、それが集客につながっていたが、それも今は昔だ。初回来店時に名刺がもらえ、来店回数に応じて「課長」や「部長」などに昇進するというシステムで、かつては「俺、部長に昇進したんだ。塚田農場で」といった冗談を言うことが流行ったこともあったが、今となってはそういった冗談を言う人はごく一部に限られる。名刺システムは集客に寄与しなくなっており、役割を終えた感がある。

「浴衣姿の女性店員による接客」も評判となったが、今となっては斬新性はなく、集客効果も疑わしい。塚田農場の女性店員は着丈が短い浴衣を着用して接客する。彼女らによる接客は独特なものがあり、たとえば、皿に「お仕事おつかれさまでした」などとメッセージを書いて出す「メッセージプレート」が話題となった。こうした独特の接客サービスは、会社員を中心に人気を博した。だが、今となってはこうしたスタイルを喜ぶ人は少ないだろう。逆に「それが目当て」と思われることを敬遠する人が増えて集客に支障をきたしている感さえある。

値段の高さがネックに

 こうした独特のスタイルもあり、塚田農場はヘビーユーザーを獲得することに成功した。塚田農場では、半年に4回以上来店するヘビーユーザーが約10万人いるという。一方で、半年で4回未満の来店にとどまるライトユーザー(約100万人)が育っていないことが課題となっている。ライトユーザーは売り上げに大きな影響を与える厚みのある層であり、この層の来店頻度を高めることなどが求められている。

 ライトユーザーを育成することに加え、半年以上来店していない客の取り込みも課題となっている。ある半年間における来店客数は約100万人だそうだが、ターゲットとする層が占める割合は約1割にとどまるという。残り9割をいかに呼び込むかも課題だ。これに対しては、SNS(交流サイト)などデジタル販促で訴求して呼び込んでいく考えだが、成果が出るのはこれからだろう。

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