昨年10月、オリックス水族館が運営する東京都墨田区の「すみだ水族館」が展示している60羽近いペンギンたちの相関図を発表し、ネット上で注目を集めた。
それ以外にも、同館にはほかの水族館ではなかなか目にしない斬新な切り口の取り組みが多いが、企画の意図はなんなのだろうか。すみだ水族館の企画広報チーム長の中村雄介さんに話を聞いた。
異例の相関図を生んだ「LOVE推しペン超選挙」
水族館といえばいきものの生態を紹介する展示こそ多いが、すみだ水族館が昨年発表した「ペンギン相関図」は、「昼間の恋(割り切った関係)」「元BL」など、人間社会以上に複雑なペンギンたちの関係性を赤裸々に紹介し、SNSなどを中心に話題となった。
そもそも、こうした相関図をつくることになったのはなぜなのか。何かきっかけがあったのだろうか。
「すみだ水族館はオリックスグループの水族館事業として、姉妹館である京都府京都市の『京都水族館』と同じ2012年にオープンしました。両館とも都市部の内陸という立地で、水槽の大きさや展示生物の数という面では、なかなか特徴を持っていただきづらいという課題がありました」(中村さん)
さらに、すみだ水族館は東京スカイツリータウンという複合商業施設の中の1テナントとしてオープンしたため、荷重の関係で置ける水槽や展示にも制約が多いという。
「水族館というとイルカやアシカのショーなどが目玉になるかと思いますが、すみだ水族館でそれを行うのは難しい。ならば、当館ならではの切り口で、今いるいきものの魅力を中長期的に発信し、本質的なコアファンを増やしたいと思って始めたのが、相関図の掲示などの企画です」(同)
相関図を作成した背景には、「LOVE推しペン超選挙」(18年10月1日~11月18日に開催)というペンギンたちの人気投票企画があった。
これは、すみだ水族館で生まれた14羽のうち11羽のペンギンたちで結成した「EDO-CCO(エドッコ)」というアイドルペンギンユニットのデビューシングル『くちばしにキッス』(iTunesなどで配信中)のセンターを決める総選挙で、“出羽”したペンギンたちのプロフィールに加え、ほかのペンギンたちとの関係性も公表しようと考えたことが、相関図作成のきっかけになったという。
「当館は『近づくと、もっと好きになる。』というキーワードを掲げ、来館してくださったお客さまと、当館のいきもの、飼育スタッフ、それから一緒に来場したお客さま同士の関係性がより近づき、上質なものになることを目指しています。『推しペン超選挙』は、ペンギン1羽1羽を個別に認識することで、それぞれ『個』として愛着を抱けますし、名前と性格がわかれば「“ふうりん”ってどの子?』と興味を持っていただけて、そうした会話から飼育スタッフとお客さまとの距離も縮まる。すみだ水族館の魅力をアピールする最適なイベントというわけなのです」(同)