業績が低迷してきたブックオフグループホールディングス(GHD)が復調した。ブックオフGHDの堀内康隆社長は、「『メルカリ疲れ』の動きが出ている」と語る。
8月16日付日本経済新聞も、「背景にあるのは宿敵であるフリーマーケットアプリ(フリマ)大手、メルカリからの思わぬ恩恵。中古市場が押し上げられる一方、商品発送など個人間取引の手間を嫌ってリアル店舗に回帰する消費者が増えている」と分析した。
“メルカリ疲れ”の恩恵というのは、本当なのか。
ブックオフGHDの2019年4~6月期連結決算の売上高は208億円、営業利益9億4500万円、純利益は6億2500万円。18年10月に持ち株会社体制に移行したため、前年同期との対比は開示されていない。18年4~6月期の実績と単純比較すると、売上高は5.8%増、営業利益は3.9倍、純利益は2.9倍である。20年3月期の通期の営業利益の見込みは18億円(19年3月期比16%増)。これに対する第1四半期(4~6月)の進捗率は52.5%という好スタートを切った。
ブックオフは18年3月期まで3期連続最終赤字に沈み、実店舗を持つ中古品買い取りビジネスの限界説が公然と囁かれていた。
確かに、スマートフォンの普及でリアル店舗はネット通販の攻勢にさらされてきた。百貨店やスーパーマーケット、コンビニエンスストアなど、国内の小売り市場全体の規模は横ばいだ。その一方で、インターネットサービス市場は右肩上がりの成長が続く。アマゾンジャパンや楽天などのネット通販に、リアル店舗の顧客を取られるという構図だ。ZOZOなど衣料品のネット通販が浸透した影響は大きい。
中古市場も、個人間で取引できるフリマアプリ「メルカリ」の台頭で市場が拡大した。唯一の業界専門紙「リサイクル通信」の調べによると、フリマアプリ市場は毎年伸び率2桁の成長を遂げ、17年に市場規模は2兆円を突破。20年には2兆6000億円、22年には3兆円規模に拡大すると予測している。
ブランド品の買い取りに軸足を移す
ブックオフGHDの業績回復をもたらした原因は何か。
19年6月末現在の店舗数は直営店404店、FC加盟店403店の807店。第1四半期(4~6月期)の直営店(既存店)の売上高が4.9%増となったほか、百貨店内での買取業務を行う「ハグオール」が好調で、営業・経常・当期の各利益は前年同期に比べ大幅な増加となった。
ブックオフオンラインを活用したオムニチャネル化への取り組みも直営(既存)店の売り上げ増に寄与した、としている。
ブックオフGHDは書籍の買い取りからスタートしたが、長期の低迷から脱却するため、高価格品買い取りを強化した。ブランド物のバッグ、貴金属、時計などの高価格品の買い取り及び販売を行うハグオールは、日本橋三越本店や銀座三越、伊勢丹新宿店、大宮タカシマヤなどの百貨店に相談窓口を設けた。
第1四半期の商材別売上では、貴金属・時計・ブランドバッグの売上高が前年同期比10.9%増と高い伸びを示した。
ハグオールの好調を受け、ブランド品の買い取りを行う小型店「BOOKOFF総合買取窓口」を都心部を中心に展開し、所得水準の高い都市部で買い取り力を高める。現在は14カ所だが、今後3年間で50カ所まで増やす。
フリマアプリを使うと個人間で価格交渉をしたり、配送や梱包をしたりしなければならない。こうした手続きを面倒だと考える消費者が実店舗に戻り始めた。
ブックオフGHDの19年3月期の既存店の買い取り額が前年比2.9%増と2期ぶりに増加に転じ、4~6月期も4.9%増えたことが、その表れだとみることができる。高価格品の買い取りにシフトした効果でもある。
とはいえ、既存店の客数はいまだ前年割れの状況が続いている。第1四半期は前年同期比1.3%減。来店客の減少が続いている現状に鑑みて、「リアル店舗に客が戻っている」と声高に言えない部分は残る。そのため、ブックオフGHDは4年間で100億円を投じ、顧客とリアルの接点を増やし、リピーターの確保を目指す。8月末には、貴金属に特化した買い取り・販売、リペア・リメイクサービスを提供する「アイデクト」の運営会社を子会社にした。
“メルカリ疲れ”は、はたしてブックオフGHDの利益に直結するのだろうか。
(文=編集部)