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LINE証券、投資未経験者“大量囲い込み”戦略が孕む危険…仮想通過の二の舞懸念も

文=編集部
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LINE証券、サービス開始(写真:つのだよしお/アフロ)

 LINE証券が8月20日にサービスを開始した。国内の主要な上場企業100社の株式を、1株単位からスマートフォン(スマホ)で簡単に売買できるのが特徴だ。投資未経験者にもサービスが利用できるように工夫し、約8100万人のLINE利用者への普及を目指す。

 LINE証券は、LINEの金融子会社が51%、野村ホールディングス(HD)が49%出資して設立した。売買できるのは、トヨタ自動車など国内の主要な上場企業100銘柄に加えて、日本や米国の株価指数などに連動する上場投資信託(ETF)9種類。

 取引時間は午前9時から午後9時まで。取引所に注文を出すのではなく、LINE証券と投資家との相対取引のかたちで売買する。売買手数料は無料だが、買値と売値はLINE証券が示す価格で、スプレッドと呼ばれる値ざやがLINE証券の収益となる。口座開設から株式売買までスマホで完結できる。

 8月20日、記者会見したLINE証券の落合紀貴Co-CEO(共同最高経営責任者)は、「1株数万円を超える銘柄を購入する場合、最低購入代金が600万円、そのほかの銘柄も最低購入代金が20~30万円と、月収以上の資金が必要になる」と語り、LINE証券では1株、最低数百円から取引できる点をアピールした。

 多くの銘柄が3000円以下で取引でき、株取引の経験のないユーザーでも、少額取引で株取引の経験を蓄積できるとの触れ込みだ。だが、スプレッドが大きければ、仮想通貨取引の二の舞になる恐れがある。購入した株の価格が下がるようなことがあれば、儲かるのは業者だけだ。

 野村HDは過去にインターネット専業証券を設立したが、事実上、撤退するなど、デジタル対応で立ち遅れている。野村HDの池田肇執行役員は記者会見で「LINEと一緒なら、日本の金融の未来を変えていける」と語った。

フィンテックに軸足を移す

 LINEはフィンテック時代に向け、次々と新サービスを打ち出した。フィンテックはスマホのインフラやビッグデータ、人工知能(AI)などの最新技術を駆使した金融サービスだ。

 LINEはLINE証券のほかにも、アプリ上で損害保険に加入できるLINEほけん、みずほフィナンシャルグループと組んでネット銀行のLINE Bankを設立。金融の本丸の銀行業にも進出する。

 LINEは目下、スマホ決済サービスのLINEペイに力を入れている。LINEの2019年1~6月期の連結決算(国際会計基準)は、最終損益が266億円の赤字(18年同期は29億円の黒字)だった。LINEペイで大規模なキャンペーンを行い、235億円を先行投資したのが原因だという。

 LINEペイは5月、LINEの友だちなら誰にでも1000円分のポイントをプレゼントできる「300億円祭」を行った。300億円祭の効果でLINEペイの月間利用者数はキャンペーン実施前の190万人から490万人に増え、300万人の新規利用者を獲得した。決済の加盟店は171万カ所に達した。ユーザーへの大盤振る舞いのばらまき費用が、そのまま赤字に直結したわけだ。

 LINEは広告などをコア事業、決済事業などを戦略事業と位置付けている。現在までのところ、戦略事業が業績の足を引っ張っている。LINEペイ、LINE証券、LINEほけん、LINE Bankなど新しい金融サービスを次々と打ち出しているが、アイデア先行の域を出ていない。いつ収益を生むようになるのかは不透明だ。LINE証券は社運を賭けた大勝負である。

BusinessJournal編集部

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