ネット証券はKDDIが参入し乱戦模様
ネット証券には、参入が相次いでいる。LINEに続いてKDDIも参入した。KDDIはカブドットコム証券株にTOB(株式公開買い付け)を実施。914億円出資して、発行済株式の49%を保有する大株主になった。カブドットコム証券の親会社の三菱UFJフィナンシャル・グループは、持ち株の一部についてTOBに応じ、グループ全体の持ち株比率は59%から51%に低下した。
社名を「auカブコム証券」に変更し、8月29日付でカブドットコム証券は東証1部上場を廃止になった。
KDDIは三菱UFJ銀行と折半出資するインターネット銀行の「じぶん銀行」についても出資比率を50%から64%に高め、社名を「auじぶん銀行」に改めた。
KDDIは総合的な金融サービス事業を新たな成長の柱に育てる。ネット銀行、ネット証券への進出は、その一環だ。
1999年10月に株式委託売買の手数料が完全自由化されてから20年。この間、インターネット証券は大手だけで個人売買の9割を占め、東京株式市場の一大勢力となった。だが、頭の痛い問題を抱えている。個人の市場参加者がどんどん減っているのだ。
日本銀行の資金循環統計によると、個人金融資産のうち株式と投資信託の残高は2018年末で242兆円。前年から41兆円減少した。このうち、40兆円は株安で資産の評価額が目減りしたためだが、残る1兆円は株・投信を手放したものだ。
11年以降、前年末比で株価が上昇した年も多かったが、8年連続で株式の売却額が購入額を上回った。この間の売越額は21兆円に達する。個人の株式離れは今年に入って一段と鮮明になった。
松井証券の松井道夫社長が「非常にショッキングな数字だ」と表現したのは、株式売買代金に占める個人比率だ。19年4~6月は17%。3割を超えていたピーク時から半減した。手数料自由化前の1998年(約14%)以来の低水準に近づきつつあるからだ。
高速取引(HFT)業者の台頭で個人のネット取引の中核のデイトレーダーが劣勢に陥った。株価の上下の揺れ幅が大きいダイナミックな面白さがなくなり、株離れをもたらしたと分析されている。
投資未経験者でもスマホで簡単に株の売買が行えるLINE証券は、個人投資家を市場に呼び戻す起爆剤になるのだろうか。
【ネット証券主要5社の業績】 ※営業収益、純利益、口座数
・SBI証券 1225億円、378億円、463万口
・楽天証券 451億円、101億円、301万口
・マネックス証券 290億円、6億円、181万口
・松井証券 273億円、95億円、118万口
・カブドットコム証券 244億円、63億円、111万口
(楽天証券は2018年12月期決算。ほかは2019年3月期決算。カブドットコム証券は現auカブコム証券)
(文=編集部)