薬を飲まずに家に余る残薬問題、5百億円規模で国の医療費圧迫 診察料アップの恐れ
医療費と残薬の問題について
2000年頃より、残薬について個人的に課題意識を持ち続けてきた。在宅医療に携わるなかでは、関係者にその必要性を説いてきたが、昨今、残薬の重要性がより顕在化している。
とくにここ数年、国家予算における医療費の負担が重いということで、医療費削減が叫ばれ、国の施策も進んでいる。薬剤師の分野においても、服薬指導の中に残薬管理の要件が具体的に盛り込まれている。年間500億円といわれる残薬の問題は、今後ますます強く管理を求められていくことが確実である。
そういったなかでは、従来の薬剤師の「調剤業務だけを行っていればよい」という価値観がいずれ通用しなくなることは明白である。
これらのことから、いよいよ個人ではなく組織としての活動を開始しなければならないと判断し、一般社団法人を設立した。この一般社団法人は、地域医療の人的ネットワークを拡大し参加者のスキルを向上することで、地域医療に貢献することを目的としている。そこで残薬に関する取り組みも継続的に行っているものである。
残薬チェックの意義を考える
残薬への取り組みについて意義を整理すると、複数の意義や必要性が挙げられる。
(1)治療を円滑に進めるための、適切な服用管理と指導
家庭での服薬状況を把握し、適切な服用を指導することで治療が円滑に進む。きちんと服薬指導をすることは、薬剤師の義務である。
(2)患者と関係者のコミュニケーションをつなぐ
医師、看護師、ヘルパーなど、必要に応じて情報共有をする。たとえば病院薬剤師であれば、患者とのコミュニケーションに30分の時間をかけ、そこで得た情報を関係者にフィードバックする。また在宅医療であれば、家庭を訪問しなければ得られない現地の情報を得ることができ、訪問をしない関係者にとって非常に貴重な情報となる。そういった情報を関係者と迅速に共有することで、たとえば医師が迅速に診療に反映することが可能となる。そういった貢献を、薬剤師ができるようになることが望ましい。
(3)医療費拡大を防ぐ
適切な診療と服薬が行われなければ、治癒が遅れ、医療費が拡大する。その際には、国の医療費支出が増加し、同時に患者自身が支払う医療費も増加する。
しかしながら、多くの患者に「調剤薬局で薬を貰っても、帰宅してからきちんと服薬しないため、残薬がどんどん積みあがっていく」という傾向が見られる。