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山田修「間違いだらけのビジネス戦略」

大塚家具、赤字で久美子社長が早くも正念場 戦略定まらず迷走?

文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント

父娘戦争に勝利した大塚久美子社長の正念場

大塚家具、赤字で久美子社長が早くも正念場 戦略定まらず迷走?の画像1大塚家具の店舗(「Wikipedia」より/Ryoma35988~commonswiki)

 大塚家具は11月7日から、全16店で展示する約34万点の商品を対象に売りつくしセールを始めた。最大で価格を50パーセント下げているという。4月の「お詫びセール」でも絶好調の客足を集め話題となったが、今回も多くの客が訪れて盛況だ。

 今回のセールは、「いったん死んでよみがえることに近い」(11月4日の大塚久美子社長発表会見)ということで、展示している高級家具をすべて売り払い、全店舗を新年から順次改装して、高級品路線から決別するという。いわば戦略の大転換となる。大塚社長は、今回のセールを「古い大塚家具の終わりの始まり」と話し、創業者である父・大塚勝久氏が築き上げたビジネスモデルとの決別を宣言した。

大塚家具、赤字で久美子社長が早くも正念場 戦略定まらず迷走?の画像2『間違いだらけのビジネス戦略』(クロスメディア・パブリッシング/山田修)

 とはいえ、高級路線でないとすれば大塚家具はどこを目指していくのか。手の届く中級家具を揃える、というポジショニングで活路が見いだせるのだろうか。経営学者マイケル・ポーターの三大戦略でいうと、「コスト・リーダーシップ戦略点」に位置するニトリとイケアは成功している。一方、「差別化戦略点」に位置取りしたのが高級路線のカッシーナだ。これも成功している。ただし、対象が富裕層となるので店舗数は4つと限定的に展開している。

 ポーターの三大戦略の3つ目は、「どちらかに特化せよ」というものなので、中級路線というのはまずいよ、ということになる。島忠がこの路線と考えることができるし、2015年8月期の「家具・ホームファッション」セグメントの年商が464億円と、ほぼ大塚家具と同規模だ。セグメント別の利益額を同社は公表していないが、年商額では7%近く前年から落としている。

 大塚家具の業績というと、今年話題を呼んだわりにはさえない。11月6日に発表した15年1-9月期決算は、売上高420億1200万円(前年同期比0.2%減)、営業損失1億9000万円(前期は1億3800万円の営業損失)、経常損失3900万円(同400万円の経常損失)、当期損失7100万円(4億8300万円の当期利益)となった。赤字が膨らんだのに配当を一株当たり80円と大盤振る舞いする予定なのは、株主総会で支持を集めるために、父娘の増配公約合戦があったからだ。

 父娘戦争で勝利して経営権を握った「かぐや姫社長」は、経営戦略の大転換という舵を切った。結果が問われる本当の正念場が来年となる。

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
有限会社MBA経営 公式サイト
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