父娘戦争に勝利した大塚久美子社長の正念場
大塚家具は11月7日から、全16店で展示する約34万点の商品を対象に売りつくしセールを始めた。最大で価格を50パーセント下げているという。4月の「お詫びセール」でも絶好調の客足を集め話題となったが、今回も多くの客が訪れて盛況だ。
今回のセールは、「いったん死んでよみがえることに近い」(11月4日の大塚久美子社長発表会見)ということで、展示している高級家具をすべて売り払い、全店舗を新年から順次改装して、高級品路線から決別するという。いわば戦略の大転換となる。大塚社長は、今回のセールを「古い大塚家具の終わりの始まり」と話し、創業者である父・大塚勝久氏が築き上げたビジネスモデルとの決別を宣言した。
とはいえ、高級路線でないとすれば大塚家具はどこを目指していくのか。手の届く中級家具を揃える、というポジショニングで活路が見いだせるのだろうか。経営学者マイケル・ポーターの三大戦略でいうと、「コスト・リーダーシップ戦略点」に位置するニトリとイケアは成功している。一方、「差別化戦略点」に位置取りしたのが高級路線のカッシーナだ。これも成功している。ただし、対象が富裕層となるので店舗数は4つと限定的に展開している。
ポーターの三大戦略の3つ目は、「どちらかに特化せよ」というものなので、中級路線というのはまずいよ、ということになる。島忠がこの路線と考えることができるし、2015年8月期の「家具・ホームファッション」セグメントの年商が464億円と、ほぼ大塚家具と同規模だ。セグメント別の利益額を同社は公表していないが、年商額では7%近く前年から落としている。
大塚家具の業績というと、今年話題を呼んだわりにはさえない。11月6日に発表した15年1-9月期決算は、売上高420億1200万円(前年同期比0.2%減)、営業損失1億9000万円(前期は1億3800万円の営業損失)、経常損失3900万円(同400万円の経常損失)、当期損失7100万円(4億8300万円の当期利益)となった。赤字が膨らんだのに配当を一株当たり80円と大盤振る舞いする予定なのは、株主総会で支持を集めるために、父娘の増配公約合戦があったからだ。
父娘戦争で勝利して経営権を握った「かぐや姫社長」は、経営戦略の大転換という舵を切った。結果が問われる本当の正念場が来年となる。