<ol> 中国の景気低迷を受け、欧米の高級ブランドが相次いで撤退したり、展開を縮小する動きが加速している。11月13日付の香港紙、東方日報記事によると、広東省広州市にあるルイ・ヴィトンの旗艦店が閉店したという。同店は広州市に初上陸した店だったが、現地住民は「11月初めまでは通常営業していたが、買い物客は少なかった。突然の閉店に驚いている」と証言している。
ヴィトンは最近、中国にある各店舗の整理を開始し、不採算店を軒並み閉店しているという。同紙は関係者の話として「今後、北京・上海・杭州の三都市を除き、中国国内で新規出店はしない予定。今後は二級都市(主に内陸部の省都)にある店も閉店ラッシュになるだろう」と伝えている。
ヴィトンを販売するLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン中国の財務担当者は11月13日付広州日報の取材に対し、「中国の既存店を整理し、重点を日本およびヨーロッパに移行させる」と述べている。同様の動きは、シャネルやプラダでも計画されているという。米コンサルティング会社、ベイン・アンド・カンパニーによると、2014年の中国の高級ブランド品の売り上げは史上初のマイナスとなり、海外ブランドの閉店が相次いでいると発表している。そうした波が、欧州の“トップブランド”にも及んでいるということで、中国の景気低迷は、想像以上に深刻なのかもしれない。
「中国に展開する欧州系高級ブランドは各店とも今年に入って3~5割、売り上げが落ちていると聞いています。また海外旅行が中間層にも浸透した結果、爆買いでおなじみのように日本や韓国などでヴィトンやシャネルの商品を買うようになった。『国内で販売されているものは信用できない』という考えを持つ人も多いですしね。日本に移転する動きも、日本人への販売強化ではなく、中国本土で直に販売せず、爆買い需要を想定しての動きでしょう。実際に、日本でも欧州高級ブランドの新規出店計画をいくつか聞いていますが、どこも中国人観光客が集まるスポットでした」(百貨店関係者)
チャイナマネーを中国ではなく日本で巻き上げるという戦略に、いささか違和感を持ってしまうが、中国経済崩壊リスクを勘案した場合、先進国・日本の土俵でビジネスを展開したほうが安全なことは誰の目にも明らかだ。好況感がまださほど実感できない日本だが、高級ブランドの出店はますます増えそうだ。
(取材・文=金地名津)