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日本電産ショック…“鉄壁”経営に変調、中国経済低迷だけじゃない世界的構造変化の衝撃

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 昨年来、米中貿易摩擦への懸念から中国の企業や家計のマインドが悪化した。それを受けて世界的に貿易や設備投資が手控えられている。サプライチェーンは混乱し、各国企業が中国から他のアジア新興国に生産拠点などを移し始めた。この影響から、日本電産が強みを発揮してきたハードディスクドライブなどに搭載される精密小型モーターや家電向けモーター、ロボット関連部品の需要が急速に冷え込んだ。現状、日本電産は中国事業に関して、底割れはしていないものの、回復の兆しも見えていないと慎重な姿勢を示している。また、為替相場で円が他の通貨に対して上昇したことも減益の一因となった。

 短期間で中国における家電向けモーターなどへの需要が本格的に底を打ち、拡大基調に戻る展開は想定しづらい。同社は在庫調整を進めてきたが、経営陣のコメントなどを見る限り、中国において精密小型モーターへの需要にさらなる下押し圧力がかかる展開は排除できないだろう。

需要拡大が鮮明化する車載モーター

 一方、日本電産が成長分野として強化してきた車載分野では、EVの駆動用モーター(トラクションモーター)の需要が如実に伸びている。10月24日、永守会長は2023年度までのEV駆動用モーターの受注見込みが455万台に達したと明らかにした。また、7月時点から9月末までの3カ月間で、トラクションモーターの出荷台数計画は5倍も伸びた。需要の拡大は鮮明だ。さらに日本電産には、2025年分の車載モーター受注も入っている。

 これは、日本電産が世界トップのトラクションメーカーを目指す大きなチャンスといえる。これまで日本電産が手がけてきた精密小型モーターなどの分野では米中の関係悪化などにより、回復に時間がかかるだろう。

 それに対して、車載モーター事業は中長期的な成長が期待できる。大気汚染対策などを目指して、中国をはじめ日米欧など世界の自動車企業がEVの開発・生産能力の向上に取り組み、モーターへの需要が高まっている。EV開発はごく初期段階にあり、需要は拡大基調となる可能性がある。

 日本電産はEV向け駆動用モーターなどの供給拡大に向け先行投資を行ってきた。それでも、同社の生産体制は需要に追いついていない。そのため、下期の研究開発費は前期から約300億円積み増される計画だ。さらに、中国に加えポーランドなどでも日本電産は生産拠点を設け、供給能力の向上と価格の引き下げを目指している。

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