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日本電産ショック…“鉄壁”経営に変調、中国経済低迷だけじゃない世界的構造変化の衝撃

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 車載分野での先行投資費用などが増加し、日本電産は2020年3月期の連結純利益予想を1350億円から1000億円に下方修正した。中国経済の変調だけが、業績予想引き下げの主因でないことは冷静に認識しなければならない。駆動用に加え、パワステ・システム、ブレーキに用いられるモーター分野でも日本電産は生産能力を高め、世界トップシェアの確保を目指している。中国経済がどうなるか不透明ななか、同社が需要の拡大が見込まれる分野で着実に成長に向けた取り組みを進めていることは重要だ。

日本電産に見る事業構造変革の重要性

 日本電産の経営を見ていると、事業構造を変革し続けることの重要性がよくわかる。将来は不確実だ。収益が減少すると、守りを重視する経営者のマインドは強くなる傾向にある。それが人情だろう。同時に、多くの企業が先行きの経済環境に慎重姿勢を強めている状況は、企業が将来の市況反転をとらえて需要を取り込み、シェアの拡大を実現するためのチャンスともいえる。どのような意思決定を下すかは経営者次第だ。

 日本電産は、自動車の電動化など、世界経済の変化に合わせて事業構造を変革してきた。そうした取り組みが、ハードディスクドライブや産業用機器向けの需要落ち込みのマグニチュードを和らげているといえる。車載モーター以外にも、同社は家電の省エネ化に対応するために海外企業を買収し、自社のモーター技術とのシナジー効果の発現を目指してきた。

 また、世界的に5G通信の普及期待からスマートフォン向けを中心に、半導体市況に底打ちの兆しも出始めた。この動きが本格的な持ち直しにつながるか否かは見通しづらいものの、5G通信の利用増加とともにデータの収集量・分析量は増大するだろう。その動きを見越した企業は増えており、サーバーやデータセンター向けの冷却ソリューションとしての精密小型モーターへの需要も出始めている。それは日本電産の収益獲得にプラスに働く。

 このように、日本電産は次から次へと、常に新しい事業を育成して事業ポートフォリオを変革・分散してきた。それが、シェアの拡大を支え、同社の成長につながった。当面は、事業構造の変革が同社の営業利益の増大につながるか否かが問われるだろう。

 成長の限界を迎えた中国経済に加え、世界経済を支えてきた米国経済に関しても、景気循環上の後退局面が近付いているとの懸念は徐々に高まっている。そのなか、EV向けのトラクションモーターの生産能力引き上げを中心とする日本電産の積極的な投資戦略が業績にどう影響するか興味深い。

(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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