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「加谷珪一の知っとくエコノミー論」

とっくに日本は輸出ではなく投資で食う国…「債権国だから豊か」の誤認識が経済衰退招く 

文=加谷珪一/経済評論家
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「Getty Images」より

 日本は現在、世界最大の債権国となっており、2018年における対外純資産残高は約342兆円もある。このところ日本経済の弱体化が指摘されているが、必ずといってよいほど出てくるのが、世界最大の債権国なのに貧しいわけがないという奇妙な反論である。

 対外純資産が大きいことは、過去の経常黒字が大きかったことを意味しているが、それが直接的に国が豊かであることを示しているわけではない。日本は徹底的に債権国としての立場を利用すべきと筆者は考えるが、債権国だから日本はスゴいという短絡的な発想は危険である。時代の変化や経済構造の転換で債権国は容易に債務国に転じることもあるし、逆もまたしかりである。債権国としての立場は、あくまでも利用すべき材料であって、精神的な支えではない。

日本はすでに投資でメシを食う不労所得の国

 2018年における日本の対外資産残高は約1018兆円、対外負債残高は約676兆円、対外資産から負債を差し引いた対外純資産は342兆円となっている。対外純資産が増えたということは、過去の経常収支が黒字だったことを意味している。

 日本は昭和の時代までは、安い労働力を利用して製品を大量生産し、諸外国に輸出するという、現在の中国のような経済構造だった。輸出する製品は日本円で販売できないので、たいていの場合、代金はドルで受け取ることになる。輸出が増加するにつれて、日本は多額の外貨を蓄積するようになった。

 当初、蓄積した外貨は原材料の輸入などに充てられていたが、金額がさらに大きくなるにつれて、運用の原資としての意味合いが強くなっていった。

 日本の経常収支は戦後、一貫して黒字が続いてきたが、昭和の時代までは、経常黒字のほとんどは輸出による貿易黒字だった。だが外貨が蓄積され、その運用益が大きくなるにつれて、投資収益に相当する所得収支が増え、2005年以降は、所得収支が貿易黒字を上回っている。

 2018年におけるサービスを含んだ貿易収支(貿易・サービス収支)の金額はわずか3900億円しかなく、これに対して所得収支(投資による利益)の金額は21兆円もある。日本は名実ともに、投資でメシを食う国になっており、もはや輸出によって外貨を稼ぐという状況ではないのだ。

 もっとも、投資収益のすべてを株式投資や債券投資などの純然たる証券投資で得ているわけではない。かつては証券投資(主に米国債)からの収益が圧倒的に多かったが、リーマンショック以降は直接投資の比率が上がり、投資から得られる収益も直接投資によるものが証券投資を上回るようになっている。

加谷珪一/経済評論家

加谷珪一/経済評論家

1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『教養として身につけたい戦争と経済の本質』(総合法令出版)、『中国経済の属国ニッポン、マスコミが言わない隣国の支配戦略』(幻冬舎新書)などがある。
加谷珪一公式サイト

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