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ニトリにまったく敵わない街の家具店がバタバタ倒産…そんなニトリの報じられない死角

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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ニトリ本店(「Wikipedia」より)

 街の家具店の倒産が増えている。調査会社の帝国データバンクによると、家具店の倒産が2019年は10月までに26件発生したという。これは、18年(13件)の2倍の水準で、東日本大震災が発生した11年以降で最多の17年(26件)と並ぶ水準になる。19年はハイペースで家具店の倒産が起きているのだ。

 背景には大手家具チェーンの台頭がある。特にニトリの存在が大きいだろう。リーズナブルな家具チェーンとしては、ほかに「IKEA(イケア)」もあるが、現在のイケアの国内店舗数は9店にすぎず、国内ではニトリが独走しているといっていいだろう。

 ニトリの運営会社、ニトリホールディングスの業績は右肩上がりで伸びている。直近本決算の19年2月期連結決算は、売上高が前期比6.3%増の6081億円、本業のもうけを示す営業利益は7.9%増の1007億円となり、32期連続の増収営業増益を達成した。

 ニトリは積極的に出店を推し進めている。8月度末時点で国内外に591店、国内だけでも519店を展開する。1年前からは37店増えた。

 かつては郊外ロードサイドを中心に出店を重ねてきたが、近年は同立地では飽和感が強まっている。そこで都心部に積極的に出店するようになった。15年には東京・銀座にある百貨店「プランタン銀座(現マロニエゲート銀座)」に出店している。低価格が売りのニトリが、日本有数の街の銀座で勝負することに不安の声が上がったが、蓋を開けてみれば多くの客で賑わい、心配は杞憂に終わった。この銀座での成功を機に、百貨店からの引き合いが相次いだ。

 近年は小型店による都心部の開拓も進めている。従来のニトリでは出店できないような場所に、 小型の雑貨店「デコホーム」とニトリの小型店フォーマット「ニトリEXPRESS」の出店を進め、小商圏の需要の取り込みを図っている。都心部は賃料が高い上に居抜き物件が多く、そういったところは手狭になりがちだ。そのため、小型店のほうが開拓しやすいという事情がある。今後はこの2業態の店舗が増えそうだ。

 街の家具店の倒産が増えているのは、こうしたニトリの増殖が大きいだろう。ニトリは低価格を売りとしているが、近年はデザイン性など品質も高まっている。ニトリの商品は下手な家具店の商品よりもおしゃれで、それでいて値頃感がある。一般的な街の家具店では、とうてい敵わないだろう。

海外展開に暗雲

 ニトリの国内既存店売上高は好調だ。11月度(10月21日~11月20日)こそ10月の消費増税の反動もあって前年同期を下回ったが、それまで近年は、前年超えの月が大半だった。19年3~11月期は4.9%増と好調に推移している。通期ベースでは19年2月期まで7期連続でプラスだ。

 ニトリの好調な業績の背景には、ベッドマットレス「Nスリープ」や接触冷感素材の寝具「Nクール」といった人気のプライベートブランド(PB)商品の存在がある。こうした圧倒的な商品力が好調な業績を支えているのだ。

 既存店が好調だったことに新規出店効果が加わり、19年3~8月期の連結売上高は前年同期比6.6%増の3215億円と大きく伸びた。ただ、営業利益は0.6%減の555億円、純利益は2.9%減の368億円と、それぞれ減った。これは、物流業界における人手不足や賃金上昇などで発送配達費が増加したことに加え、既存店の計画的な改装が前年同期より増えて展示什器費がかさんだためだ。ただ、それでも利益率は圧倒的で、売上高営業利益率は17%にもなる。

 死角がないように見えるニトリだが、不安材料がないわけではない。国内では出店余地が徐々に狭まっており、近い将来に成長が鈍化する可能性がある。また、海外展開がうまくいっていないことも気がかりだ。

 海外では、特に中国でのつまずきが懸念される。中国には14年10月に1号店を出店。その後、徐々に店舗網を拡大していった。だが、19年2月期の出店計画が未達に終わるなど必ずしも順調とはいえない状況となっている。同期は20店を出店して期末に44店にする計画だったが、13店増の37店にとどまった。20年2月期に関しては、3店純減し34店になる見込み。先行きが不安視されている。

 ニトリが中国で苦戦を強いられているのは、進出が14年と最近であるため、知名度を高めきれていないことが大きい。ニトリは中国でも低価格を武器としているが、知名度が低いため品質の高さを消費者に伝えきれておらず、「安物の家具店」という位置づけに甘んじている状況だ。知名度を高めて十分な集客を実現するには時間がかかるとみられる。ニトリは中国で22年に200店、32年に1000店にするという壮大な目標を掲げたが、見直しを迫られている。

 中国市場でのつまずきで海外展開に暗雲が漂う。19年8月度末時点の海外店舗数は72店。国・地域別では中国が38店、台湾が32店、米国が2店となっている。台湾への出店は07年に始めており、12年経過してこの店舗数というのは進捗がいいとはいえない。13年に進出した米国に関してはわずかな数の店舗展開にとどまっており、こちらも進捗がいいとはいえない。

 ニトリは「22年に国内外で1000店、連結売上高1兆円」の目標を掲げている。だが、国内は飽和感が漂い、市場が先細りするなか、頼みとなる海外がこの状況では、目標達成は困難といわざるをえない。19年8月度末の国内外の店舗数が591店で、直近本決算の19年2月期の連結売上高が6081億円となっているが、目標は遥か彼方だ。

 こうした海外展開の遅れによる成長の鈍化懸念がニトリの不安材料といえるだろう。ただ、これは街の家具店が直接的にかかわる話ではない。ニトリは、国内では先細り懸念があるとはいえ、盤石な状況に変わりはない。ニトリによる駆逐は当面続きそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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