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ところが、米国では手続きの難航が予想されている。最新の識者アンケートによると、次期大統領選が本格化する今夏の議会休会前の批准を予測している人はわずか5%程度。大方の予想は、次期大統領確定後のオバマ大統領任期中(レームダック期間)と、次期大統領へのバトンタッチ後で、両者が拮抗しているという。次期大統領候補には、共和党の有力候補トランプ氏をはじめ、TPPに否定的な向きが多いのも事実だ。それだけに、日本が今国会で批准して米国にプレッシャーをかけて、TPPの早期発効機運を盛り上げたいところだ。
早期発効が確実になれば、これまで様子見を決め込んでいた中国や韓国、タイ、インドネシア、フィリピンなどが方針を変えて、TPPに参加を表明する可能性が一段と高まる。そうなれば、世界最大の自由貿易圏がさらに広がる。
2つの影
TPPは、モノの貿易に関する関税の自由化率が高いだけでなく、投資の自由化や知的財産の保護、国有企業との差別待遇の禁止など、通商分野の幅広い新ルールを盛り込んでおり、日本企業の中国進出を後押ししたり、撤退を思いとどまらせる効果が期待されている。
だが、甘利前大臣が政治とカネのスキャンダルにまみれ、TPPを所管する経済財政担当大臣の職を全うできなかった問題は今なお、2つの影を落としている。
第一は、TPPに続いて、甘利前大臣に交渉のまとめ役を担ってもらいたかった日EU間のEPA(経済連携協定)交渉だ。実は、TPPの発効に伴い相対的な対日輸出競争力の低下を懸念するEUは、昨年中の早期妥結を要望していた。だが、日本でまたぞろ農業団体や農林族の抵抗が強まり、早期合意に至らなかった。特に、チョコレート、パスタ、チーズなどを聖域化して国内産業を保護せよとの要求が強いという。コメや牛肉などTPPで聖域化したものと比べても、これら3品の保護がそれほど重要とは考えにくい。甘利前大臣には、TPPの交渉時のような交渉団のとりまとめを期待する声が大きかったのだが、辞任で水泡に帰したというのだ。
第二は、批准に向けた国会対応の問題だ。はっきり言うと、経済界を中心に、後任に決まった石原伸晃大臣の資質に疑問符を付ける向きが少なくない。当の石原大臣は2日、衆参両院で所信表明に臨んだ際、慎重に原稿を読みながら甘利氏と同様にアベノミクスを踏襲すると繰り返すなど、とりあえず安全運転を心がけているようだ。
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