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三越伊勢丹、ビックカメラ誘致で百貨店の常識破壊…“なりふりかまわず”必死の生き残り策

文=編集部
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伊勢丹新宿本店(「Wikipedia」より/Kakidai)

 百貨店は来店頻度を高める店づくりや、店舗立地に合わせた商品政策を進めている。高級百貨店を標榜してきた三越伊勢丹ホールディングス(HD)は、人気ブランドの「アナスイ」から撤退し、家電量販店のビックカメラを招き入れる。意外な選択に驚きの声が上がる。

 米ファッションブランドの「アナスイ」と結んでいる国内販売とライセンスの使用を2020年3月末で終了する。三越伊勢丹や商業施設に入っている直営店全10店とアウトレットの2店を順次、閉鎖する。アナスイは米ニューヨーク発の女性向け服飾雑貨ブランド。伊勢丹が1996年にライセンスの使用契約を結び、日本に広めた。化粧品やバッグには熱烈な支持層がいるブランドだが、近年は衣料品の販売は苦戦していた。

 アナスイやケイタマルヤマなどのファッション衣料を展開する子会社のマミーナは、2017年3月期に売上高40億円に対して営業損益は3億円と赤字。債務超過に陥っていた。17年4月に就任した杉江俊彦社長の構造改革の一環として、マミーナを18年3月末で清算した。アナスイは三越伊勢丹が継承。だが、アナスイ事業の売上高はピークだった07年と比べると半分程度まで急落。結局、撤退することを決めた。

 ライセンス契約をめぐっては、三越伊勢丹が製造の契約しているメーカー約15社のなかからアナスイと直接契約を結ぶところが出ており、化粧品やバッグの国内販売は継続される見込みという。中高年向けのブランドが多い百貨店が、若い女性に人気のあるブランドを手放すことは集客力の低下につながるため、杉江社長の決断に首を傾げる向きは少なくない。

ビックカメラで「高級家電」を売る

 その一方で、ビックカメラを日本橋三越本店に20年早春に誘致する。新館6階フロアに面積1200平方メートルの小規模店舗を開く。ビックカメラの百貨店へのテナントとしての出店は船橋東武店(千葉県船橋市)、小田急百貨店に入る町田店(東京都町田市)に次いで3店目。ただ、百貨店という業態や顧客層に合わせて製品展開などの販売方針を変更するのは三越本店が初めてだ。

 ハイエンドゾーンの高級家電など「これまでビックカメラでは取り扱うことができなかったブランドやアイテム」を販売するという。高級家電は杉江社長が取り扱いたいとかねてから口にしていたアイテムだ。構造改革に関するインタビューで、必ず高級家電という言葉が飛び出す。アマゾン・ドット・コムなどのネット通販が勢いを増し、小売店から若者の足が遠のいている。百貨店とは何かを議論しているうちにたどり着いたのが、コモディティー(汎用品)ではなく、人々の生活を豊かにするものを売ることだった。

 欧米の百貨店では高級家電というジャンルが確立されている。杉江社長は、「デンマークの高級家電バング&オルフセンの45万円のステレオなど、我々の顧客にふさわしいものがある」と語っている。

「旧三越の“本丸”である日本橋三越本店のテナントとして家電量販店が出店するとは」(旧三越の元幹部)と驚きの声が上がっている。百貨店は高級感を大事にする。老舗百貨店と低価格を訴求する家電量販店の組み合わせはミスマッチの感は否めない。

“百貨店発祥の地”で百貨店の常識を壊す

 日本橋三越本店は祖業である呉服屋「越後屋」発祥の地に立つ。1905(明治38)年、三越呉服店は日本初のデパートメントストア宣言をした。わが国の百貨店の歴史は、ここから始まった。それは日比翁助の三越呉服店専務としての初仕事である。当時、三越には社長のポストはなく、日比が実質的な社長であった。日比の優れた広告戦略を端的に示したのが、「今日は帝劇、明日は三越」という、有名なキャッチフレーズだ。日比は、近代百貨店の祖と呼ばれている。

 伝統と格式を誇る老舗百貨店が安売り家電量販店を誘致したことについて、「三越伊勢丹はそれほど追いつめられているのか」(ライバルの大手百貨店首脳)と受け止める向きもある。杉江社長の決断は、吉と出るか、凶と出るか。もし、成功したら高級家電コーナーを設ける百貨店が増えるかもしれない。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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