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柏木りか「経済ニュースからみる生活への影響」

不祥事“予備軍”だった企業リスト…「今年、不祥事を起こす企業」の見抜き方を公開

文=柏木​理佳​/城西国際大学大学院准教授、生活経済ジャーナリスト
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ゴーン被告が無断出国 夫妻でインタビュー応じる(写真:ロイター/アフロ)

 昨年末、日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告が不法に海外逃亡を果たし世間を騒が せたが、日産に限らず今年も企業不祥事の発覚が多発しそうだ。株主の力は強くなり、組織文化も変わらないからである。不正防止のための法律も厳しくなり、一定以上の規模の企業では、​社外取締役の設置も義務化される。日産で問題になった役員報酬の決定方法も株主総会で認められなければならないし、事業報告書にも開示しなければならない。

 では、近年なぜ日本企業の不祥事が相次いでいるのか。すぐ頭に浮かぶだけでも住友重工、三菱電機、三菱マテリアル、森永製菓、大和ハウス工業、すてきナイスグループ、スバル、スズキ、レオパレス21、関西電力、安藤ハザマ、IHIなど枚挙にいとまはない。独禁法違反や子会社の不正、インターネット上での不正取引や個人情報流出などが増えているのが特徴だ。

 2018年と19年の不祥事企業46社(監査役会設置会社32社、指名委員会等設置会 社8社、監査等委員会設置会社6社)を筆者が調査した結果、共通点が見つかった。データを分析すると、近いうちに不祥事を起こしそうな企業も見えてくる。実は日産や三菱マテリアルなども、以前から“不祥事候補企業”だった。

 近年では株主の意見が強くなり、業績が改善されないと経営陣は株主総会などで圧力をかけられる。かつて経営陣はまるで自分が大株主であるかのように自分でたちを監査・監督すればよかったが、今ではそれは許されない。経営陣が不正しないように、外部のチェックする社外取締役を入れなければならなくなった。それを嫌がっている経営陣は多く、そこで不正が起きやすい。

共通点1:チェックは外部の会計監査法人のみの監査役会設置会社

 他人にチェックされるのを嫌い自分たちで管理したい経営陣は「監査役会設置会社」(外部の会計監査会社のみが監査チェックする)を選ぶが、これは日本独特の形態であり、上場企業全体の6割も占めている。諸外国では、企業内にも監査委員会がある。この委員会では社外取締役である会計士が監査チェックする。英国など不正が少ない企業では、その後、改めて外部の会計監査法人がチェックする。

 社内に監査機能を有しない監査役会設置会社は、いきなり監査法人の監査を受けることになり、監査法人が不正を見抜けないこともある。その場合、不正発覚は遅れる。

 ちなみに筆者が調査した不祥事企業46社のうち、7割近くの32社が監査役会設置会社である。他の調査でも2014年から18年の不祥事企業全体の75%を占めている。監査役会設置会社​の比率は73.3%だったので、それより多く、不正率が高いといえる。組織的な古いグループ会社が多い。

 一方、監査委員会がある監査等委員会設置会社は24.7%を占めていたが、不祥事の比率は22%と低く、不祥事の抑制効果がある。例外的に指名委員会等設置会社(社内に監査委員会以外に指名・報酬委員会もある)は2%のみしか占めていなかったが、不祥事の比率は3%と高い。この3%の企業は、経営陣の報酬を決める報酬委員会、経営陣を決める指名委員会があり、このメンバーの社外取締役に実質、経営陣が支配されることになる。そのため友達を社外取締役にすることもある。この2%を省くと監査委員会の有効性がわかる。

共通点2:社外取締役に会計士がいない

 不祥事が多発していることから、先進国では遅れて日本でも2021年までに、社外取締役の設置が法律で義務化される。上場していない大企業も2人以上の社外取締役を選任しなければならない。それでも取締役や社長などの経営陣は、他人からチェックされるのを嫌がり、監査チェックができる会計士や財務経験者を選んでいない。日産、スルガ銀行、かんぽ生命、日本郵政などは社内に監査員会があるが、現在も会計士はいない。このことからも再生する気があるのか疑問である。

 筆者の調査でも、不祥事企業の不正金額が大きいほど、社外取締役に会計士がいないか、その比率が低い。また、監査委員会の委員長が社外取締役でかつ会計士の場合、不正が起きても金額が小さく抑制効果がある。しかし、欧米では当たり前なのに、日本では委員長を会計士の社会取締役にする企業は少ない。

 高い報酬を受け取る任期2年の社外取締役は、経営陣の顔色をみて、はっきり反対意見が言えないこともある。不祥事企業32社のうち2社(カカクコム、ぐるなび)以外は、社外取締役は全員、独立取締役である。これは、会社法がかわり、元役員やグループ会社や取引先の関係者であっても、10年たてば「独立性がある」と​みなせるようになったためである。いくら「独立性」をうたっても、外国人や著名人、知人などをお飾り的に選任している会社が多く、監督機能を果たせないない企業が多い。筆者の調査でも、「独立」社外取締役の比率が高くても不正抑制効果はない結果になった。

​共通点3:セキュリティ対策の部署がない

 不祥事を起こした企業の年報やコーポレートガバナンス報告書を隅から隅まで調べたところ、いつ不祥事が起きてもおかしくない体制であった。

【不適切検査・改ざん】

住友重工、ユニチカ、ジャムコ、川金、KYB、スバル、スズキ、IHI、日本フォームサービス

【独禁法違反・談合】

ニチイ学館、シード

【景品表示法違反】

食べログ、ぐるなび、ホットペッパー、キリンシティ

【その他】

 リクナビ(個人情報漏えい)、ヤマト運輸(過大請求)、森永製菓(下請法違反)、ヤマハ発動機(賃金未払い)、京王観光(切符不正使用)、大和ハウス工業(建築法違反)、レオパレス21(同)、セブン&アイHD(不正アクセス)、すてきナイスグループ(金商法違反)これらの企業は社外の監査法人の監査にだけ依存し、社外取締役にも社外監査役にも会計士が存在しないか、優良企業より比率が低い。

 また、外部からの不正アクセスで個人情報が漏えいする企業も増えているが、共通するのはセキュリティ強化部署がないという点だ。数億円から数十億円の特別損失を出して、その対処に追われている企業も多いが、あくまでリスク管理を怠った加害者であることを忘れてはいけない。

 以上からわかることは、不祥事を起こしそうな企業とは、セキュリティチェック体制が整備されておらず、社外取締役・社外監査役の会計士比率が低く、監査委員会など社内チェックが手薄。不正予防のための法律が厳しくなるのは、表面的な取り組みしかしていない企業が数多く存在するからである。これらは、企業の年報やコーポレートガバナンス報告書をみれば、すぐに判断できる。

 (文=柏木​理佳​/城西国際大学大学院准教授、生活経済ジャーナリスト)

柏木りか/城西国際大学准教授、生活経済ジャーナリスト

柏木りか/城西国際大学准教授、生活経済ジャーナリスト

生活経済ジャーナリストとして景気の動向や物価、節約などについて伝授。
豪州の大学から香港、中国に滞在。シンガポールでは会社設立に携わる。豪州の大学院にてMBA(経営学修士)取得、研究員を経て嘉悦大学准教授に。育児中に桜美林大学院にて社外取締役の監査・監督機能について博士号取得。
現在:城西国際大学院 国際アドミニストレーション研究科 准教授。NPO法人キャリアカウンセラー協会代表。
大学では「企業戦略」「経営組織論」「キャリア」(日本語)(英語)等の授業を担当。
シンガポールで会社設立の準備に携わり、観光収入の多い豪州・香港・中国に滞在、世界15カ国の人と働く。
国土交通省道路協会有識者会議メンバー。
日本を変えるプラチナウーマン(プラチナサライ小学館)46人に選ばれる。

Twitter:@kashii1218

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