中国がまた対日制裁 ソニーに丸紅も審査待ちでM&A出来ない!?
合併するのはJFEHD傘下のユニバーサル造船とIHI傘下のアイ・エイチ・アイマリンユナイテッド。合併後の新社名はジャパンマリンユナイテッドで売上高は3800億円。
両社は12年1月30日、同年10月に経営統合すると発表した。ユニバーサル造船を存続会社にする合併で持ち株比率はJFEHDとIHIがそれぞれ45.93%。ユニバーサル造船の少数株主である日立造船が残り、8.14%を保有する。
統合後の建造量は、国内では今治造船に次いで2位、世界で7位となる。かつて日本のお家芸といわれた造船は、今や、長引く円高で中国・韓国勢に大きく差をつけられた。ジャパンマリン社は市場が求める省エネ船を素早く開発して、中国・韓国勢との競争の切り札にする計画だった。
ところが、統合は遅れに遅れた。当初は10月1日に統合予定だったが、中国での独禁法の審査が長引いたため11月1日に延期。さらに12月1日に延ばした。しかし、これもダメだった。3度の延期を経て、ようやく13年1月1日付で合併が決まったのである。
世界の造船市場は中国、韓国、日本の3カ国で建造量、受注量ともに世界の9割を占める。日本と中国は石炭などを運ぶばら積み船などで競合関係にある。ただ、今回合併する両社の船舶建造量を単純合算しても世界7位の水準。特定の船舶への偏りもなく、独占禁止法に抵触する可能性はなかった。
統合が再三延期になったのは沖縄県・尖閣諸島の国有化を巡る反発から、中国の独禁法を審査する規制当局が日本企業の案件を意図的に遅らせているからである。大型のM&Aの場合、世界各国の規制当局の承認を取り付ける必要がある。08年にM&Aに関する法律の運用を始めた中国では、中国での事業規模が20億元(約260億円)の場合や、世界での売上高が100億元(約1300億円)超のものを審査対象にした。日本企業同士の経営統合でも中国商務省の独占禁止局の承認を受けなければならない“縛り”を課したのである。
尖閣諸島問題に対する中国流の対日経済制裁との見方が強い。中国に工場を持つ日本企業が必要とする日本製の部品や生鮮品の通関を遅らせるのはいつもの手口だ。M&Aの承認を遅らせるのは新たな制裁カードである。
M&Aの審査手続きを多く手掛ける中国の大手法律事務所の幹部は日本のメディアに対して「日中両国の対立が深刻化した(12年)9月、中国当局内で『日本関連の手続きを遅らせろ』という口頭の通知があった」と明らかにしている(日本経済新聞12年12月31日付朝刊)。
住宅メーカーの大和ハウス工業による中堅ゼネコン、フジタの買収も13年1月22日付になることが、やっと正式に決まった。中国の独占禁止当局の審査手続きが完了したからである。
大和ハウスは少子高齢化で国内の建設・住宅市場が先細るとの懸念から、海外での売り上げ比率がスーパーゼネコン並みのフジタを完全子会社することで、12年8月に合意した。
フジタは中国での売上高が全社の約1割を占めていることや、フジタを傘下に入れた場合の大和ハウスの中国事業への影響が大きいことから、中国規制当局に独禁法上の審査を申請していた。これが大きく遅れて12年12月20日付で予定していた買収が延期になった。