中国人観光客による「爆買い」は、そろそろ終わりに近づいたといわれているが、量から品質を吟味して高額な買い物をするかたちへと変わりつつある。
観光庁がまとめた昨年10~12月の中国人観光客の1人当たりの買い物代は約16万円となっており、ほかの国に比べ突出して高い。前年同期と比べて3万円ほど伸びており、爆買い意欲は依然として旺盛だ。家電や化粧品をはじめとして、購入する商品の幅は広がっている。
1月27日付日本経済新聞では、次のように報じている。
「紳士服チェーン最大手の青山商事は(1月)30日、国産生地を国内の縫製工場で仕上げた男性用の高級スーツを発売する。2000着を用意しており価格は税別で9万9000円。裾上げも15分程度で完了するようにして、主に日本製品を好む訪日外国人に売り込む」
この記事に拍子抜けした向きが少なくなかったのではないか。青山商事が展開する「洋服の青山」はかつて、スーツを1着買えば2着目は1000円という「2着目1000円」セールを目玉に売り上げを伸ばしてきた。
2着目を原価割れの超安値で提供することで固定客をつかんできたといえる。低価格を切り札にしていた洋服の青山が、1着10万円のスーツを発売するというのだ。「誰が買うのか」と首を傾げたくなるが、この「10万円スーツ」のターゲットは就活の学生やビジネスマンではない。訪日客を狙うインバウンド商法なのだ。
市場規模の縮小に高価格化で対応
青山商事の15年4~12月期連結決算の売上高は、前年同期比7.7%増の1598億円、営業利益は29.4%増の91億円だった。為替予約に伴う金融派生商品の評価損を計上した結果、最終利益は52億円で4.8%減った。
「ヒルトン」など高級ブランドスーツが堅調で、女性向けのフォーマル衣料の売れ行きも良かった。米国発の衣料品店「アメリカンイーグルアウトフィッターズ」を展開するカジュアル事業も積極出店が奏功し、売上高が4割増えたという。
なぜ、営業利益が3割近くも増えたのだろうか。それは、過度の値下げを抑制したのが大きな要因だ。「2着目1000円」セールはもうやめており、14年10月以降、「2着目が半額」あるいは「2着目は1万円引き」に移行した。