TPP、今さら聞けないけど、結局私たちにどんなメリットがあるのかがわかるお話
5点目は、模倣品や海賊版対策の強化である。これは、模倣品を水際で職権で差し止める権限を各国当局へ付与することや、商標権を侵害しているラベルやパッケージの使用や映画盗撮への刑事罰義務化等が含まれている。このため、模倣品による被害を受けている中小企業の製品の模倣品の防止や技術の保護や、デジタルコンテンツの海賊防止にメリットが生じる。
6点目はビジネス関係者の一時的な入国に関する規定の導入である。これには、各国が短期の商用訪問者や契約に基づくサービス提供者、企業駐在員、投資家、配偶者等の滞在期間を約束することなどが含まれており、海外で商談やサービスの提供、駐在等を行う中小企業にメリットが生じる。
7点目は、電子商取引に関する規定の導入である。これは、越境情報流通の自由化やサーバー設置要求の禁止等を含むため、日本にいながらITを活用して商品を販売する中小企業にメリットが生じる。
8点目は、国有企業に関する規定の導入である。これにより、国有企業が他国企業に対して無差別に待遇を与える原則や国有企業の透明性が確保されるため、海外で国有企業と取引をする中小企業にメリットが生じる。
9点目は、政府調達に関する規定の導入である。これにより、ベトナムやマレーシア等WTO政府調達協定に参加していない国も規律の対象になるだけでなく、米国の一部の電力関連機関やマレーシア投資開発庁なども新たな規律の対象になるため、インフラ市場や政府関係機関の調達市場へのアクセスが改善し、中小企業にもメリットが生じる。
10点目は、中小企業に関する規定の導入である。具体的には、各締結国がTPP協定の本文等を掲載するための自国のウェブサイトを開設して中小企業の情報を含めることや、小委員会を設置して中小企業がTPP協定による商業上の機会を利用することを支援する方法を特定することなどを規定し、中小企業のTPP協定活用促進に向けて各国が協力することとなった。
こうした期待が高まるなか、TPP大筋合意を受け、政府内ではTPP対策の予算化の動きが進んでいる。ただ、TPPの発効には参加12カ国が協定に署名し、議会の批准など国内手続きを終える必要があり、実際には2年近くかかるとみられている。従って、政府は発効に備え、中小企業の声に耳を傾けることで万全な対策をとるとともに、経営者側も環境変化を好機ととらえる姿勢が期待されよう。
(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト)