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永濱利廣「“バイアスを排除した”経済の見方」

TPP、今さら聞けないけど、結局私たちにどんなメリットがあるのかがわかるお話

文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト
TPP、今さら聞けないけど、結局私たちにどんなメリットがあるのかがわかるお話の画像1「Thinkstock」より

 TPP(環太平洋経済連携協定)をうまく活用するために押さえておくべきことは、中小企業へのTPPのメリットであり、TPPは製造業のみならずサービス業も含めた多様な中小企業の発展の契機となろう。

 まずメリットの1点目は関税の撤廃であり、具体的にはわが国が輸出する工業製品の99.9%の関税が撤廃される。自動車部品を例にとれば、現行税率が主に2.5%である米国への輸出については品目数で87.4%、輸出額で81.3%の即時撤廃で合意しており、これは米韓FTAを上回る水準である。

 また、現行税率が主に6.0%であるカナダへの輸出についても品目数で95.4%、貿易額で87.5%の即時撤廃で合意しており、これも加韓FTAを上回る水準である。従って、中小企業の輸出拡大のみならず、大企業の輸出拡大を通じても中小企業の事業に大きなメリットとなろう。

 なおTPPでは、陶磁器でも対米輸出額の75%を即時撤廃、タオルでも米国の現行税率9.1%を5年目に撤廃、カナダの現行税率17%を即時撤廃など地方の中小企業に関連する品目についても関税撤廃で合意している。

 続いて2点目は、商品がどの国でつくられたかを特定する原産地規則のルールのなかで、「完全累積制度」が導入されることである。これにより、生産工程が複数国にまたがっても、TPP参加12カ国内で生産された製品は関税優遇を受けられることになる。従って、部品の供給網が広がれば、優れた加工技術を持つ日本の中小企業の競争力は一層高まることになろう。

 3点目は、投資サービスの自由化である。具体的には、コンビニなどの小売業のみならず、劇場・ライブハウスなどのクールジャパン関連、旅行代理店など観光関連などの外資規制が緩和される。また、進出企業に対する技術移転要求やロイヤリティ規制などが禁止となるため、サービス業も含めた幅広い分野で海外展開にメリットが生じる。なかでも、食品や日本各地の特産品等を生産する中小企業がコンビニと提携することで海外展開が容易になろう。さらに、ISDSと呼ばれる国と投資家の紛争解決手続きも導入された。これにより、中小企業が相手国政府から不当な扱いを受けて被害を被った際に、直接国際仲裁へ訴えることが可能になる。

環境変化を好機ととらえる姿勢が重要

 4点目は、迅速通関など通関手続きの円滑化である。これは、貨物の到着から48時間(急送貨物は6時間)以内に引き取りを許可する原則である。これにより、海外の納入先への納入遅延リスクが軽減し、オンライン通販などにもメリットが期待できる。

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

1995年早稲田大学理工学部工業経営学科卒。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年第一生命保険入社。98年日本経済研究センター出向。2000年4月第一生命経済研究所経済調査部。16年4月より現職。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事、跡見学園女子大学非常勤講師、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使、NPO法人ふるさとテレビ顧問。
第一生命経済研究所の公式サイトより

Twitter:@zubizac

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