安倍晋三首相が27日、公立小中高校と特別支援学校を春休みまで休校にするよう要請した。萩生田光一文部科学相は「部活も自粛」「子どもはできるだけ自宅にいるように」とくぎを刺している。さらに、大手企業はテレワークなどを利用するように社員の出社を自粛している。
つまり、休校中に子どもは部活も塾通いもダメ、不特定多数が訪れる飲食店の利用も自粛するのが当然となり、ファミリーレストランにもショッピングセンターのフードコートにも行けない。同じように不特定多数の人が行き来し、狭い空間で濃厚接触する可能性があるコンビニエンスストアにも行ってはいけない。
国は、3月中は「子どもは一日中家の中に隔離せよ。家族以外と接触させてはならない」と親に言っているのだ。その言葉を忠実に実行するなら、親は3度の食事を自宅でつくらなければならない。子供の面倒を見てくれる人がいなければ、スーパーに買い物に行くこともできない。
しかし、毎日3度3度の食事をつくれるだろうか。そこで頼りにするのは出前・宅配だ。正社員は有給休暇、パートにも生活保障をすると首相は言う。では客は来ないし休業補償もされない飲食店や弁当・惣菜業者はどうすればいいのか。
その答えが出前・宅配だ。当然、ピザの宅配は増えるだろうが、毎日3度ピザは無理だ。といって、3度3度食事をつくることはしたくない。そうなれば、出前を注文する家庭はかなり増えるだろう。しかも、出前は消費税が8%である。今は、「出前始めました」とか「3月中出前10%引き!」などの告知をSNSで広く発信することができる。もちろん、店の前に大きく掲示すれば、店の前を通り過ぎる親は目にするだろう。
飲食店もミュージシャンも出前?
「客が来てくれない」と嘆いても何も良いことはない。国は正社員等の比較的裕福な家庭や大企業を手厚く保護する。中小企業には、言葉だけで実質何もしてくれない。もちろん、3月や4月に中小企業支援として現金を支給してくれるわけではない。出前をする人手が足りなければ、3月限定でパートを募集する方法もある。仕事がなくなる人にとって、一時的であれパートの仕事はありがたいだろう。
回転寿司やファストフードは持ち帰り(テイクアウト)が多くなるだろう。出前ピザや出前寿司も多くなるだろう。飲食店が生き残る方法は出前しかない。
コンサートも出前したらどうだろう。スポーツは無観客試合をするところが多い。それなら、コンサートも無観客コンサートをすればよい。その映像をコンサートの入場料の半額で配信したらどうか。ミュージシャンは、画面に向こうにいる観客にカメラ目線で歌えばいい。
単なるコンサートを映像配信するだけでは意味がない。ファン個人個人に語りかけるように歌い話すのだ。「私に向かって歌ってくれている。私に話しかけてくれている」――。そんなファンと一体になれる演出をしなければならない。
コンサートにも行けない、仕事もできない、遊びにも行けない、唯一の娯楽は携帯電話だ。そこにお気に入りのミュージシャンが、画面の向こうから自分に向けて、話しかけてくれる。歌ってくれるのだ。それを望むファンも多いのではないだろうか。
自粛が1~2週間で済む保証はない。IOC(国際オリンピック委員会)は東京五輪開催の可否を判断する期限を5月下旬としていると報じられているが、政府はそれまでに終息させなければならない。3月いっぱいで収束する保証はないし、これからPCR検査が増えるので感染者はますます増えるだろう。
そして外出自粛を解消した時には一挙に街中に人があふれ、今までの鬱憤がたまっているので今まで以上に騒ぐかもしれない。そうなれば、もっと感染が広がる。新型コロナウイルスは、死んだふりをして蘇る「ゾンビウイルス」であることを忘れてはいけない。政府も私たちも、「自粛は続くよ、どこまでも」と思って対応策を考えるべきだ。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)