ふるさと納税というと、どんなイメージが浮かぶだろうか。謝礼品として送られてくる肉や魚、メロンやリンゴなど地域の特産品を想像する人が多いだろう。確かにふるさと納税はその謝礼品が魅力ではあるが、地域によってはその豪華さを競うような動きが出るなど、弊害も散見されている。
2016年度のふるさと納税の総額は、民間推計で年3500億円程度と見込まれている。全体の95%以上がインターネット申し込みという特徴がある。納税者側に制度がよくわからないとか、申し込み方法がよくわからない、地域についての知識がないなどの課題がある一方、自治体側には、地域の認知度を上げてヒト、モノ、コトで賑わい、地域を活性化させたい狙いがある。双方をどう結びつけるかが、制度を有効活用するカギである。
そんななか、日本最大のふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクと旅行大手JTBが提携し、より効果的なふるさと納税の選択肢を検討することになった。具体的には、以下の内容を検討する。
(1)ふるさと納税の返礼として、付加価値の高い旅行などの提供を行い、「モノ」から「コト」へのシフトを起こす
(2)自治体側にふるさと納税資金を活用した地域活性化の提案を行う
(3)インターネットに頼り切ることなく、JTBのネットワークをいかした寄付の受付を行うことなどを検討している
トラストバンクとJTB西日本の推計では、単に農林水産品を提供したときの経済波及効果は1.5倍なのに対し、旅行の場合は経済波及効果が約7倍だという。旅行のみならず、地域の産品を購入したり、地域で消費したりするからである。
JTBは、地方の魅力を再発見し、人口流入を目指すDMC(デスティネーション・マネジメント・カンパニー)戦略を掲げている。これは、観光庁が地域活性化のために進めているDMO(デスティネーション・マネジメント・オーガニゼーション)を企業版に置き換えたものといえる。
JTBはこの戦略のもと、すでに法人向けには「地恵(ちえ)の旅」という地方の魅力を発掘する旅行を展開しており、これを今後一般向けにも展開する予定だ。こうした動きが軌道にのれば、ふるさと納税の新たなスタイルとして世の中の関心も一段と集めるかもしれない。
JTB西日本ふるさと納税事業推進室の西田匡志室長は、次のように語っている。