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垣田達哉「もうダマされない」

海外では東京五輪延期は既定路線の情勢…安倍首相、決断遅れるほど世界中からバッシング

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
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東京2020プレビュー オリンピック聖火リレー 聖火到着式(写真:つのだよしお/アフロ)

 安倍晋三首相は、16日のG7首脳テレビ電話会議後、記者団に対し「人類がウイルスに打ち勝った証しとして、完全なかたちでの(東京五輪の)開催を目指したいと表明し、各首脳から支持を得た」と語った。

 この発言をめぐり「今年の開催では完全なかたちで実施することは無理」なので、延期するのではないかという憶測が広がった。この発言について菅義偉官房長官は17日の記者会見で、「予定通りの開催に向けて準備を着実に進めていく」と開催延期を否定した。しかし、萩生田光一文科相は「仮に日本国内で収束しても、参加国が減ってしまえば、完全と呼べない」と述べている。東京都の小池百合子知事も、19日の記者会見で「具体的にどうこうという段階ではない」と、今は延期を検討していないと述べている。

 一方、IOC(国際オリンピック委員会)は17日、ビデオ会議で理事会を開き「東京五輪を開催する立場に変わりはない。大会まで4カ月もあるのに抜本的な決定をする必要はない」という意思を表明している。

 事ここに及んで、日本側とIOCが本気で開催するつもりがあるとすれば、あまりにも浮世離れした話だ。日本も含め世界中の人の多くが「東京五輪は今年は無理」と思っている。特に欧米の人々にすれば、新型コロナウイルスのことで頭がいっぱいで、五輪どころの話ではないだろう。

 五輪に参加する、あるいは参加しようとしているアスリートの大半も「延期やむなし」というより「延期してほしい」と願っているだろう。代表選考のための大会が、延期、中止されていることもあって、まだ出場枠の43%の代表が決まっていないという。

中止・延期すべき3つの理由

 こういう状況を考えれば、当然、東京五輪の中止または延期という結論になる。中止・延期の理由は、大きく分けて次の3つある。

(1)アスリートの立場

 すでに代表が決まっている人と、五輪直前に決まった人では、五輪に望む準備という点で不公平になる。各国の事情により、アスリートの練習環境に大きな差が出ている。万全の状態で、東京五輪に臨めるアスリートは数少ない。

(2)日本の立場

 7月までに各国の新型コロナウイルスの感染が終息するとは考えられない。終息したとしても、世界中の人が日本の東京を中心とした大都市に集中することは、コロナウイルスのクラスター(集団感染)を形成する可能性がある。いったん収まった新型コロナウイルスが、東京を起点として世界中に広がる可能性がある。そうなれば、無理に東京五輪を開催した日本に非難が殺到する。

(3)日本以外の国の立場

 各国の新型コロナウイルスの感染状況、終息状況が異なるなかで、世界中の人々が集まる東京に、五輪だからといって観戦に来るだろうか。たとえWHO(世界保健機関)が終息宣言を出したとしても、未知なことが多い新型コロナウイルスである。危険を承知の上で、東京に来る人は、アスリートの家族や関係者に限られるだろう。

 送り出す各国の立場としても、せっかく収まった新型コロナウイルスを再び持ち込まれるようなことがあってはならない。東京五輪を観戦に行くこと自体を自粛するよう国民に呼びかける可能性もある。

決断が遅くなれば世界から批判

 日本側が開催にこだわる理由は、世界中から観光客が集まる五輪の経済効果を期待しているからだろう。箱物はすべて完成しているので、箱物の経済効果は終わっている。もし、観光客が半減、あるいは、ほとんど来ない五輪を開催するなら、開催する意味がなくなる。それなら1年あるいは2年後に、世界中の人々が安心して来日できる環境をつくって迎えることこそ、本当の「おもてなし」といえるのではないだろうか。

 政府も関係者も、国民も、皆、東京五輪開催はほとんど無理だと思っている。そうであれば、延期または中止の宣言をできるだけ早くしたほうが良い。それは、アスリートのためでもあり、日本のためでもある。早ければ早いほど、痛みは小さく済み、処置も早くできるので回復も早くなる。

 五輪がなくなれば、北海道は札幌で予定通り北海道マラソンを開催すればよい。開幕が延びたプロ野球は日程に余裕ができる。開催しないことで救われる面もある。「まだ4カ月ある」のではなく「もう4カ月しかない」のだ。もしも安倍首相が3月中に「東京五輪延期」を宣言すれば、世界中から称賛されるだろう。しかし、それが遅くなればなるほど「そんなこと当然じゃないか。なんでもっと早く言わなかったのか」ということになる。WHOやIOCに期待していても、おそらく何も結論は出ないだろう。開催国の責任として、一刻も早く延期を表明するべきである。

(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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