吉村洋文大阪府知事が厚生労働省から提示された非公開前提の文書を公開し、物議を醸している。
大阪府は19日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、20~22日の3連休の大阪府と兵庫県間の往来自粛要請を発表、これを受け兵庫県も同日、同様の発表を行ったが、井戸敏三兵庫県知事は会見で、事前に大阪府から相談がなかったことを明かし、「大阪はいつも大げさ。兵庫との往来さえしなければ済むのか」とコメントし、大阪府と兵庫県の対立がクローズアップされていた。
こうした状況のなか、吉村府知事は21日放送のテレビ番組『ウェークアップ!ぷらす』(日本テレビ系)に出演し、往来自粛要請の根拠として、厚労省から説明を受けた際に提示された非公開前提の文書を提示し、「僕は公開すべきと思いました。大阪と兵庫はいつ感染の急増が起きてもおかしくない状態ですから」と説明した。
吉村知事は20日に自身の公式Twitterアカウント上でもこの文書「大阪府・兵庫県における緊急対策の提案(案)」を公開しており、以下の内容が記載されている。
「見えないクラスター連鎖が増加しつつあり、感染の急激な増加が既に始まっていると考えられる」
「試算では、19日までの間に患者78人(うち重篤者5人)
次の7日間(20~27日)に患者586人(うち重篤者30+9人)
次の7日間(28~3日)に患者3374人(うち重篤者227人)
→感染者報告数がこれから急速に増加し、来週には重症者への医療提供が難しくなる可能性あり」
「社会的隔離により見えないクラスター連鎖を分断し、感染者の爆発的増大の回避・抑制をはかる」
「大阪府・兵庫県内外の不要不急な往来の自粛を呼びかける」
今回の吉村知事の行動について、全国紙記者は語る。
「以前から吉村知事と井戸知事が犬猿の仲なのは関西では有名な話で、この2人は何かにつけてお互いに、さやあてを繰り広げてきました。今回も井戸知事から、まるで大阪府の独断で往来自粛要請を出したかのように言われてカチンときた吉村知事が、“ふざけるな”ということで反論しているのでしょう。
ただ、国がここまで大阪と兵庫のコロナ感染に危機感を抱いていたというのは驚きです。今後2週間で感染者が40倍以上に増えるという試算は、かなり衝撃的といえます。もし吉村知事が文書を公開しなければ、この国のシミュレーションは公けになっていなかったわけで、その点では意義があったと思いますよ。さらにいえば、国はまだ表に出していない情報をかなり持っていることもうかがえ、国の情報公開の姿勢にも疑問の目が向けられる恰好になりました」
新型コロナ感染拡大防止のためにも、国と地方自治体には、しっかりとした協力体制を築いてほしいものだ。
(文=編集部)