今年に入り、ユニクロは価格を下げる方針を明らかにしました。2014年に5%、15年に10%と、2年連続で実施した値上げに伴う客数や売り上げの低下に対応した処置とのことです。
昨年10月の決算会見で柳井正会長兼社長は、原料費の高騰といった環境下において値上げは品質を守るための“やむを得ない”対応だったと説明していました。しかし、筆者は1月2日付本連載『ユニクロ、連続客数減地獄に突入か…値上げの一方で巨額広告費、失敗or長期利益拡大?』において、ユニクロが意思を持って高価格化させる施策を実行しているのではないかと指摘しました。
その後、原料費などに大きな変化が見られないなかで値下げを打ち出すことができたということは、やはりこれまでは主体的に高価格化を推進していたとあらためて感じています。
ユニクロ値下げの是非
みなさんは、ユニクロの値下げについて、どのように思われるでしょうか。もちろん消費者サイドに立てば、大歓迎であることは間違いないでしょう。逆に、ユニクロサイドに立ち、ユニクロの長期にわたる成長という視点で考えた場合はいかがでしょうか。
筆者は、将来的には中国やインドといった新興国から強力なファストファッション・ブランドが台頭してくると予想しているため、コスト高の日本企業にとって低価格に依存した施策は得策ではないと考えています。したがって、ユニクロが広告や店舗や商品開発といったポイントにしっかりと投資し、ブランドや機能性などによる差別化に注力した結果として価格が上昇しても、こうした戦略は正しいように思います。
しかし、想定を超える客数および売り上げの減少に陥ってしまったという結果を見ると、ユニクロが保有するブランド価値や商品価値を超えるレベルでの値上げが実施されてしまったと判断するべきでしょう。今回、一時的に値下げに踏み切ることはやむを得ないとしても、将来のあるべき姿は低価格に頼らず、適正な価格で消費者を魅了できるようなブランドになることです。そのために今後も広告や商品開発に注力していくことは重要であるといえます。
GUの強化
また筆者は、ユニクロの値上げを嫌う消費者のうち、ある程度は同じくファーストリテイリング(ファストリ)が運営するジーユー(GU)に流れ、ファストリ全体としては値上げの影響は限定的ではないかと考えていました。しかし、ライバルのしまむらの業績が好調といったニュースを見ると、実際には消費者は他社に流れてしまったと捉えるべきでしょう。
そこで、低価格を志向する消費者の受け皿として機能するように、GUの販売網の拡充や商品力のアップにも注力する必要があるでしょう。
安くて“そこそこ”品質も良いユニクロ、徹底した低価格を訴求するGUという戦略では、将来台頭してくるであろう新興国発のファストファッション・ブランドとの競争を勝ち抜くことは難しいでしょう。したがって、こだわりの強い消費者はユニクロへ、低価格志向の強い消費者はGUへといった流れをしっかりと確立する必要があるように思います。
こうした体制を構築できていれば、新興国のブランドが市場に台頭してきても、少なくともユニクロはしっかり差別化でき、ファストリは長期にわたり成長できるのではないでしょうか。
(文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授)