マーケターがイデオロギーについて考えるとき
筆者が現在研究を行っている米国では、大統領候補を選出する予備選が行われています。現時点で、共和党ではドナルド・トランプ氏が大統領候補に指名されることがほぼ確実になっています。民主党ではヒラリー・クリントン氏とバーニー・サンダース氏の戦いが続いていますが、クリントン氏が最終的に指名されるというのが大方の予想です。
周知のように、米国の政治は共和党と民主党の2大政党制で運営され、おおまかには共和党が保守、民主党がリベラルと呼ばれるイデオロギーを代表してきたといってよいでしょう。多くの国で、政治的なイデオロギーは右派と左派、右翼と左翼、保守とリベラル、保守と革新、といった1次元的な対立軸で語られてきました。
さて、マーケティングをテーマにしている本コラムで、なぜイデオロギーや政治の話を始めたのでしょうか。今回お伝えしたいのは、政治とマーケティングには、意外なつながりがあるということです。
ひとつは、最近、選挙でマーケティング的な手法が活用されるようになったという話があります【註1】。
しかし、ここでは別の話として、イデオロギーの違いが消費行動と関係する可能性について取り上げたいと思います。イデオロギーは政治に対する立場を表すものですが、それが政治を超え、消費を含むあらゆるライフスタイルと深く関係している可能性があるということです。
そのような関係をわかりやすく示した本に、速水健朗氏の『フード左翼とフード右翼 食で分断される日本人』(朝日新聞出版/2013年)があります。「フード左翼」は典型的には自然食を好み、政治的にはリベラルな人々です。政治的には保守だが自然食を好む人も、逆にリベラルだがジャンクフードを好む人もいるでしょう。しかし、全体としてそういう関連性があるなら、この主張は客観的に裏づけられたことになります。
「犬好きか猫好きか」でイデオロギーを推測する
米雑誌「TIME」のウェブサイトに、人々のライフスタイルとイデオロギーの関係になんらかのデータ分析を行ったと思われるページがあります。以下の項目がどの程度自分に当てはまるかを答えていくと、当人の「保守度」「リベラル度」の予測値が表示されるのです。