オリンピックで一時的な雇用が増えるので、地方から東京および首都圏に働きに出る人、ボランティア活動をする人が増え、地方の人口が一時的に減る。人口が減れば消費も減る。地方にとって東京オリンピックは、マイナス面のほうが大きい。
もうひとつ問題は、消費行動をする人が減ることだ。上表のように、要介護認定者数は毎年20万人前後ずつ増え続けている。消費に貢献していた年金受給者の需要が、毎年20万人近く減っていくのだ。要介護認定者数は11年に500万人を超え、15年には600万人を超えた。このペースで増えれば、19年には700万人近くになる。
増税時期には、今よりも要介護者が100万人近く増えるかもしれない。要介護者を抱える家族(介護者)は、介護関連にお金がかかるので、節約・貯蓄型の消費行動に移行せざるを得ない。19年には、団塊の世代は70歳を超える。地方の第一次産業の担い手たちの多くも、70歳を超える。年金受給者は増えても、年金受給額は減る。一方で年金受給者が次々に要介護者に認定されていく。
今の日本は、お金をいっぱい使う消費者は減り、お金をできるだけ使わない消費者が増えていく構造になっている。社会保障が充実しない限り、安心して消費する気分にはなれない。GDPの個人消費を増やすには、子育てを含めた安心できる社会保障制度の確立しかない。
食品表示法と軽減税率のダブルパンチ
軽減税率の対象となる食品の定義として引き合いに出された食品表示法。この法律は14年4月にすでに施行されているが、経過措置期間が5年あるので、完全実施は20年4月である。消費税と違って延期はない。
食品表示法が業界や消費者にどんな影響を与えるかは別の機会に述べるが、従来の法律を統合したものなので、見た目はさほど大きな変更はない。ちょっとした追加・変更しかされていないが、これが流通・食品業界には非常に大きな経済的負担になる。消費者にとっては有益な法改正だが、中小企業では自社内で解決できないやっかいな問題もある。
19年は、流通・食品業界の食品表示法対応準備期間である。そこに増税・軽減税率導入を持ってこられるのは、経済負担のダブルパンチである。食品が増税されなくても、食品表示法への対応は必須であり、食品表示法の対象外の外食産業は、軽減税率では増税対応を迫られる。食品が軽減税率の対象でも、社内経理では軽減税率の仕組みが必須となり、インボイスを導入しなければ大手企業との取引ができなくなる可能性がある。しかも、増税・軽減税率対応と食品表示法対応は、いずれも19年度中になる。