4月28日から5月8日まで開催されていた「肉フェス TOKYO 2016 春」および「肉フェス FUKUOKA 2016 春」で提供されていた鶏肉の寿司「ハーブチキンささみ寿司」を食べた人たちに、多くの食中毒の症状が発生しました。まだ死亡事故の報道はありませんが、過去には、福井、富山の焼肉店で生食に適さない牛肉を使用したユッケで死亡事故が発生しています。今回の肉フェスでも、一歩間違えば多くの犠牲者が発生した可能性があります。
主催者に大きな責任がある
全国で肉フェスのような、食に関するイベントは数多く開催されています。客は一軒一軒のお店よりも、主催者を信じてイベント会場に足を運びます。主催者はチケット販売や集客、利益だけを考えるのではなく、火事などが発生しない対策、怪我や食中毒などの事故防止といった安全に関する事項を十分管理すべきです。
鶏肉、卵などの潜在的に食中毒を起こす可能性のある食材は、知識と経験のある人が取り扱わないと、大きな事故につながります。イベント開催前にメニュー、設備、従業員の知識、経験などを主催者は管理点検すべきです。イベント前日など客に提供する前に、届け出通りの設備や従業員であるかどうかの点検を行い、主催者自ら提供されるメニューの試食点検を行う必要性があります。
今回の肉フェスで提供されたささみ寿司は、最低限の食品衛生に関する知識があれば、炎天下の屋外で提供できるメニューでないことは明らかです。このメニューの提供を事前に止められなかった主催者の責任は重いと考えます。
開催中の監査、点検が必要
主催者はイベント開催前の確認だけでなく、開催中も監査、点検が必要です。特に屋外のイベントであれば、商品の温度管理だけでなく、調理中の食材の温度管理状況の確認、ピークに合わせたつくり置きなど本来のありえない行為が行われていないかの確認が必要です。
客が行列をなしていても、食中毒を発生させる可能性のある行為を見つけた場合は、販売を止める必要があったのです。事故を予測できなかったではなく、事故を事前に予測して想定外の事故を防ぐことが主催者には求められます。
今回事故を起こしたメニューに違和感をもった客は多数いたと思います。客が違和感をもったときに連絡する通報センターがあれば、被害はここまで大きくはなりませんでした。準備、監査を行って事故が起きないように対策をとることが、主催者の責務であることはいうまでもありません。
(文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表)