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レナウン倒産は対岸の火事ではない…オンワードや三陽商会、アパレルは軒並み苦境

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
レナウン本社(「Wikipedia」より)
レナウン本社(「Wikipedia」より)

 アパレル大手のレナウンが倒産した。同社は5月15日、東京地方裁判所より民事再生手続き開始決定および管理命令を受けたと発表した。負債総額は3月31日現在で138億7900万円。今後はスポンサーを探し、事業の維持・再生に取り組む考えだ。

 主要販路の百貨店の低迷で、レナウンは厳しい状況に置かれている。日本百貨店協会がまとめた2019年の全国百貨店売上高(全店ベース)は、前年比2.2%減の5兆7547億円で6年連続のマイナス。ピークとなる1991年の9兆7130億円からは4割も減った。「ZARA」などファストファッションの台頭や、米アマゾン・ドット・コムなど電子商取引(EC)の拡大などで顧客離れが進んだ。

 退潮著しいが、レナウンは百貨店売上高が占める割合(単体ベース)が55%(19年12月期)にもなる。百貨店に依存しているわけだが、その百貨店の退潮でレナウンの業績も低迷するようになった。

 19年12月期(決算期変更で10カ月の変則決算)は連結最終損益が67億円の赤字(前期は39億円の赤字)と、2期連続で最終赤字を計上。今期(20年12月期)も新型コロナウイルスの感染拡大で百貨店やショッピングセンターの休業で収益が上がらず、既存店売上高は3月が前年同月比42.5%減、4月が81.0%減と大きく落ち込んだ。

 こうした厳しい状況のなか、レナウンは取引先に対する売掛金の回収が滞る事態となった。親会社で中国繊維大手の山東如意科技集団の子会社に対する19年12月期に支払期日が到来する売掛金の回収が滞ったため、同期に貸倒引当金53億円を計上。資金が入らず、5月中旬以降の債務の支払いができなくなった。こうしたことから民事再生手続き開始の決定を受けて経営破綻するに至った。

 レナウンは、1902年に大阪で繊維卸売業を創業したのが始まりだ。「ダーバン」「アクアスキュータム」「アーノルドパーマータイムレス」などのブランドで知られる。23年に「栄光」などの意味を持つ「レナウン」を商標に採用。60年代にレナウンのテレビCMソング「ワンサカ娘」が流行し、脚光を浴びた。バブル景気に沸いた90年代初頭が最盛期で、世界最大の事業規模を誇った。しかし、バブルが崩壊し景気は低迷、90年代後半以降に「ユニクロ」などファストファッションが台頭するようになり、次第にレナウンの業績は下降するようになった。

中国・山東如意との提携も不発

 そうしたなか、2004年にレナウンとダーバンが経営統合し、事業のてこ入れを図ったが、再成長はできず業績は低迷したままだった。そこで頼ったのが中国の繊維会社大手、山東如意だ。10年に山東如意と資本業務提携を締結、約40億円の出資を受けた。13年には子会社となった。

 レナウンは11年、山東如意が持つ中国での販売・物流ネットワークなど経営資源を活用し、中国市場でレナウンブランドの商品の販売を始めた。しかし、展開ブランドの知名度の低さや山東如意との連携がうまくいかないなどで中国での展開は難航。結局、撤退に追い込まれた。

 近年は中国の景気減速や米中貿易摩擦で中国経済が厳しくなり、アパレル業界も苦境に立たされ、山東如意も厳しい状況に置かれている。山東如意はレナウンのほかにもイギリスの「アクアスキュータム」など海外ブランドを買収して規模を拡大したが、苦戦を強いられていたとみられる。

 こうしたさなかに、山東如意の子会社から売掛金の回収が滞る事態となった。山東如意が連帯債務者となっているが、債務保証が履行されなかった。そして追い討ちをかけるように新型コロナが直撃し、販売不振でこの面からの現金も入らなくなった。資金が枯渇に近づくなか、資金調達を試みるも実現せず、資金繰りに行き詰まった。

 レナウンは今後も店舗の営業は続ける。ただ、不採算店の整理や不採算ブランドの撤退が避けられないだろう。また経営破綻でブランド価値の毀損は免れず、スポンサー探しは難航しそうだ。

百貨店向けアパレルは軒並み苦境

 百貨店向けアパレルは、レナウン以外も厳しい。オンワードホールディングスは20年2月期の連結最終損益が521億円の赤字(前期が49億円の黒字)に転落した。特別退職金や店舗などの減損処理に伴う特別損失を計上したほか、繰り延べ税金資産の取り崩しで法人税等調整額を計上したことが響いた。同社は厳しい状況にあり、20年2月期に国内外で約700店を閉店したほか、21年2月期にも約700店規模を閉店する方針だ。21年2月期の連結業績予想は新型コロナの影響を合理的に算出することが困難なことから「未定」としている。

 三陽商会は20年2月期(14カ月の変則決算)の連結最終損益が26億円の赤字(前期は8億1900万円の赤字)だった。最終赤字は4期連続となる。さらに新型コロナが追い討ちをかけた。新型コロナの感染拡大を受けて臨時休業したことが響き、店頭売上高は3月が前年同月比44%減、4月が81%減と大幅減収が続いている。21年2月期の連結業績予想は新型コロナの終息時期に関して不確定要素が多いことから、未定としている。

 ワールドは21年3月期の連結最終損益(国際会計基準)が60億円の赤字(前期は80億円の黒字)になる見通しだ。新型コロナで臨時休業したことが響いた。既存店売上高は3月が41.9%減、4月が84.5%減と大幅減が続いている。

 このように各社厳しい状況にあり、レナウンの倒産を対岸の火事とすることはできない。各社とも抜本的なてこ入れが必要だ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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