数千万円のポルシェと高級マンションを出版社の社長におねだりしたと「週刊文春」(文藝春秋)にスクープされた、北海道日本ハムファイターズの斎藤佑樹。「女の子がおじさんに『ヴィトン買って』というノリでプレゼントをねだる」などという証言を読むと、「プロになって人が変わった」「練習嫌い」「中継ぎを見下している」というネガティブな噂も、真実に思えてしまう。
かつて甲子園で名勝負を演じた頃のイメージはすっかりかすんでしまったが、あるプロ野球関係者は語る。
「こんなの、お金持ちが相撲取りのタニマチになるようなもので、野球界ではよくあること。驚くことじゃないよ。それよりも、今、出版社って厳しいんでしょ? 『社員をリストラしているのに、こんなことをしていていいのかな』と思うよね」
「文春」によれば、タニマチとされたベースボール・マガジン社(以下、ベーマガ)は3年前に経営悪化から30名以上をリストラ。今年1月には東京・水道橋にあった本社ビルを売却し、現在は日本橋の貸しビルに移転している。また、今年1~5月期は1億円以上の赤字を出しているという。3年ほど前までベーマガで仕事をしていたというライターが語る。
「『文春』にリークしたのは、ベーマガの元役員だと思うよ。それはさておき、有能な編集者は、みんな辞めちゃってるね。今残っている社員は社長の覚えがいい編集者ばかりだけど、みんな使えないよ。原稿料も年々安くなってるし。今回の話を聞いて、社長を知る人間はみんな『やりかねない』と笑ってるよ」
同様に、「今はベーマガと縁を切った」という別のライターも「3年ぐらい前、懇意にしていた編集者が辞めた後、見知らぬ編集者から仕事を依頼されました。それまで、原稿料は400字あたり4000円もらっていたのに、いきなり1000円に下がって。それ以来、一切仕事は受けていません」という。
さらに、別の媒体で仕事をしている作家が「クリエイティブ」の面に疑問を投げかける。
「ほかの媒体の編集者に原稿を送ると『面白かった』とか『ここの意味がわかりにくい』などと指摘をしてくれるけど、ベーマガの編集者にはそういうアクションが一切ないんだよね。(ページの)スペースを埋めるのに精一杯、という感じだよ」と辛らつだ。
ベーマガ・池田社長はタニマチの資格なし
さらに、タニマチとされた池田哲雄社長への疑問の声も聞こえてきた。「文春」には「外国人と交際する女性記者が(斎藤に)取材に来た時、(斎藤が)『彼氏のアソコはやっぱりデカいの?』と質問して記者を唖然とさせていた、と池田社長が自慢気に話していた」と書かれている。この点について、前出のプロ野球関係者は、以下のように語る。
「社長の下に取材に来た『文春』の記者に対して『斎藤から、ポルシェが好きなんでといわれて』と饒舌を振るい、挙句の果てに斎藤を“奴”呼ばわりしていたけど、これらが本当ならタニマチになる資格なんてないよ。極論をいえば、女遊びや博打などのスキャンダラスな秘密を共有して、誰にもしゃべらないのが真のタニマチだよね。少なくとも、俺なら、こんなにおしゃべりな人とは絶対に付き合いたくない。“斜陽のタニマチ”も“落ち目の斎藤”も、どっちもどっちだけどね」
プロ野球が読売ジャイアンツ一辺倒だった時代から、スポーツ紙に掲載されないパシフィック・リーグの情報を載せたり、二軍の情報を拾ったりするなど、ベーマガの代名詞ともいえる「週刊ベースボール」は「プロ野球応援団」的な存在だった。「ベーマガ創業者の池田恒雄社長時代から、いい意味でタニマチ気質だった」といわれるほど、プロ野球と共存共栄だったわけだ。
しかし、「ウハウハの時代ならまだしも、出版不況の今、台所事情は火の車でしょ。『社員が聞いたらどう思うかな』と感じる話だし、今の斎藤にそれだけの価値があるかなぁ。タニマチヅラするよりも、社員に還元したり、高い原稿料を出して有能な書き手を集めたりするべき」と前出のライターは語る。
プロ野球にとっても、なくてはならない出版社である。会社の士気を下げるような行動は、これぐらいにしておくべきだろう。
(文=後藤豊/フリーライター)