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札幌ドーム、経営危機で「解体論」も…税金10億円投入の新モード、使用わずか2件

文=Business Journal編集部
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札幌ドーム(「Wikipedia」より/モンモン

 プロ野球・北海道日本ハムファイターズに去られた札幌ドームが、早くも経営危機を迎えている。日ハムが今年度シーズンから本拠地を札幌ドームからエスコンフィールドHOKKAIDO(北海道)に移したことで、札幌ドームは年間20億円以上とみられる売上を失い、今年度(2024年3月期)の純損益は2億9400万円の赤字予想。そんななか、集客の要として総額10億円を投入して設置したのが、1~2万人規模のイベントを開催する「新モード」だが、現時点で使用・予約件数はわずか2件にとどまっていることがわかった。9月10日に初めて新モードで行われたラグビー・ワールドカップ日本戦のパブリックビューイング・イベントは使用料収入がゼロであることも伝わり、市民からは「事実上の税金の無駄使い」との声もあがっている。すでに市は本年度予算で札幌ドームへの助成金として1億4000万円を計上するなど事実上の補填を決定しているが、札幌市が55%の株式を持つ第三セクターである札幌ドームの経営が行き詰まれば、さらに税金が投入される可能性もあるため、地元経済界では早くも「ドーム解体」論まで聞かれる事態となっている。

 日ハムが本拠地移転の検討を本格化させたのは2016年のことだった。17年には新球場の建設候補地として札幌市は旧道立産業共進会場(現ブランチ札幌月寒)、北海道大学構内、真駒内公園などを提案したが、日ハムは北広島市が提案する「きたひろしま総合運動公園」予定地の活用案を採用。今年、新球場「エスコンフィールド」と周辺エリアを含めた「北海道ボールパークFビレッジ」が開業した。

 約32ヘクタールの広大な敷地内を擁するFビレッジには、球場のほかに数多くのショップや飲食店、ミュージアムなどの文化施設、自然を楽しむアクティビティ、キッズエリアなどが設けられ、野球の試合がない日でも365日楽しめるのが特徴。宿泊施設だけでもホテルの「tower eleven hotel」、プライベートヴィラの「VILLA BRAMARE」、手ぶらでキャンプ体験ができるグランピング施設「BALLPARK TAKIBI TERRACE ALLPAR」の3施設があり、なかでも注目度が高いのが、球場内のレフトスタンド上に設置された「tower eleven hotel」だ。12室ある客室から窓越しに試合を観戦することができ、球場にも入場できるほか、試合がない日もFビレッジ内の飲食店をはじめとする各施設を楽しむことができる。

「お役人組織の第三セクターである札幌ドームでは、とてもこんな施設開発の発想は出てこない。Fビレッジの運営は日ハム球団を運営する株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメントという完全な民間企業。球場で試合がない日もFビレッジ全体で集客を見込め、さらに野球に興味がない層の足を向かせることができる」(地元メディア関係者)

日ハム、札幌ドームと決別の背景

 札幌ドームはサッカーW杯日韓大会の札幌開催を目的として01年に開業。札幌市は札幌ドームの経営安定化のためにはプロ野球球団の誘致が欠かせないと考え、当時人気が低迷していた日ハムの誘致に成功。その後、日ハムの人気と成績は上昇し、札幌ドームと日ハムはWin-Winの関係を築いているかにみえた。

「札幌ドームは日ハムから使用料として1試合につき800万円、入場者2万人を超えると入場者1人につき400円ずつを追加で徴収しており、16年には値上げを実施。また、球場内の広告料や売店など付帯施設からの収入もほとんどが札幌ドームの取り分となる。球団が球場を一体運営していれば、こうした収入はすべて球団のものとなり、さらに多額の球場使用料を支払う必要はない。実際、一体経営を行っている東北楽天ゴールデンイーグルスや横浜DeNAベイスターズは黒字化が常態化している。

 日ハムは再三にわたり使用料の減額や、広島東洋カープの本拠地、マツダスタジアムで広島市が採用する指定管理者制度(公共施設の運営を民間企業等に委託する制度)の導入を提案してきたが、札幌ドームは耳を貸さなかった。札幌市職員の天下り先である第三セクターの札幌ドーム側に改革の意識は乏しく、また『10年以上も一緒にやってきた日ハムが出ていくはずがない』とたかをくくっていた節がある。Fビレッジの総工費は約600億円とされるが、これまで札幌ドームに年間20億円以上を払ってきたとすれば、単純計算で30年で回収できるし、Fビレッジ全体で年間通じて一定の売上を見込むことができ、『もっと早く移転すればよかった』とすらいえる」(同)

経済合理性が欠如

 去られた側の札幌ドームがイベント誘致の施策として実施したのが「新モード」設置だ。札幌ドームは当サイトの取材に対し、その費用について次のように説明する。

「新モードにかかった費用につきましては、札幌市さまの工事となっており、約10億円(大黒幕約4億円、トラス約4億円、電気設備や消防設備改良約1億2千万円)と聞いております」

 その新モードだが、利用は低迷している。現時点の使用・予約状況はどうなっているのか。

「使用数:1件(9/10開催ラグビーワールドカップパブリックビューイング)
予約数:1件(11/19開催予定「全開エール」)
 未発表のイベントの予約件数に関しましては回答を控えさせていただきます」(札幌ドーム)

 地元メディア関係者はいう。

「ラグビーWのパブリックビューイングは、市が新モード利用の実績をつくるために、地元の北海道ラグビーフットボール協会にお願いして実施したもので、費用は札幌ドームの持ち出し。10億円もの税金を使って新モードをつくった挙句、そこで行うイベントの使用コストまで事実上、税金での負担となり、地元からは『何をやっているんだ』という声もあがっている」

 このパブリックビューイングの開催費用について札幌ドームはいう。

「今回のパブリックビューイングは新モードの活用方法の一つを株式会社札幌ドームとしてお示しするために開催をいたしました。なおイベント開催に関する費用については、本イベントに限らず、全てのイベントにおきましてお答えできかねますのでご了承ください」

 地元企業関係者はいう。

「1~2万人を収容するイベント施設は市内にほかにもあり、10億円もかけて同じようなものをつくるのは経済合理性に欠く。第三セクターである以上、札幌ドームの経営が行き詰まれば救済のために再び税金が投入されるのは目に見えており、今年度も赤字は3億円以上に膨らむとみられている。いっそのこと解体して、収益を生む別の施設にするなり、土地を民間企業に売却して止血したほうが、税金の無駄遣いを続けるよりよい」(地元企業関係者)

(文=Business Journal編集部)

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