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経営苦境の札幌ドームの屈辱…去られた日ハムに「提案」し2試合だけ開催

文=小林英介
札幌ドーム(23年2月、本稿記者撮影)
札幌ドーム(23年2月、本稿記者撮影)

 日本野球機構(NPB)と北海道日本ハムファイターズは23年12月19日、24年シーズンの春季非公式試合(オープン戦)日程を発表した。オープン戦は2月23日から3月24日までの1カ月間行われるが、日本ハムの一部開催球場をめぐってちょっとした話題となっている。

「ドーム側が助けを求めた?」札幌ドームでの試合開催にさまざまな声

 日本ハムのオープン戦日程を追っていくと、3月2日・3日(対阪神戦)の開催球場は札幌ドームとなっている。これについてSNS上では「収益のない札幌ドームが助けを求めたのか」「いやいや、日本ハム側が手を差し伸べたのかもしれない」などとさまざまな声があがり、盛り上ががっていた。

 その背景には、日本ハムが本拠地を札幌ドームからエスコンフィールドHOKKAIDO(北海道)に移すに至った両者間の複雑な事情がある。もともとはサッカーW杯日韓大会の札幌開催を目的として01年に開業した札幌ドームだったが、札幌市はその経営安定化のためにはプロ野球球団の誘致が欠かせないと考え、当時人気が低迷していた日ハムの誘致に成功した。その後、日ハムの人気と成績は上昇し、札幌ドームと日ハムはWin-Winの関係を築いているかにみえた。だが、札幌ドームは16年に日ハムから徴収する一試合当たりの使用料を値上げ。日ハムが札幌ドームに支払っていた使用料は1日あたり約800万円前後とみられ、球場内の広告料や売店など付帯施設からの収入もほとんどが札幌ドームの取り分となっており、日ハムは16年から本拠地移転の検討を本格化させた。新球場の建設候補地として札幌市は旧道立産業共進会場(現ブランチ札幌月寒)、北海道大学構内、真駒内公園などを提案したが、日ハムは北広島市が提案する「きたひろしま総合運動公園」予定地の活用案を採用。日ハムは新球場「エスコンフィールド」を北広島市に開業させ、23年シーズンから本拠地を移した。

エスコンフィールドHOKKAIDO(北海道)(23年3月、本稿記者撮影)
エスコンフィールドHOKKAIDO(北海道)(23年3月、本稿記者撮影)

 そうした経緯もあるなかでの日ハムによる札幌ドームでの試合となるだけに、さまざまな見方があがる事態に。23年12月8日付「スポーツ報知」ウェブ版記事は『【日本ハム】札幌ドームで1年ぶり試合…来年オープン戦開催 エスコン開業後初』との見出しで、球団関係者の話として「エスコンの天然芝もまだ“寝ている”状態。芝の(生育)問題もあるので、球場内を温かくすることが難しい」などと背景を説明。札幌ドームは温度調整のしやすさから、冬でも寒さを気にしないで済むことも理由に挙げられるとの見方だ。

 また、12月19日付「AERA dot.」記事『苦境の札幌ドームに日本ハムが“救いの手”? win-winの関係は構築されるか、両者の思惑は』は、「長年にわたって北海道における野球のメッカであったドームだが、今や“負の遺産”になるのではないかと市民には大きな懸念があるのも事実」として、札幌ドームでの試合開催を待っているファンも少なくないというニュアンスで報じた。

 本サイトで以前書いたように、札幌市が集客の要として総額10億円を投入して設置した、1~2万人規模のイベントを開催する「新モード」の不発などもあり、札幌ドームは苦しい経営を強いられている。

「新モードを使用したのは、今年開かれたラグビーワールドカップのパブリックビューイングと11月開催の高校生らが参加した吹奏楽パフォーマンスイベントのみ。今後の使用については調整中だ」

「やはり日本ハムがいた影響は大きい。試合は平日もあった。日ハムが抜けた穴は大きいと感じている」(23年12月4日配信『札幌ドーム担当者への取材で「深すぎる苦境」浮き彫り…エスコンとの明暗が鮮明』より)

 一方、エスコンフィールドと周辺エリアを含めた「北海道ボールパークFビレッジ」のを運営するファイターズスポーツ&エンターテイメントは、Fビレッジの9月30日までの約半年間の来場者数が年間目標としていた300万人を上回る303万人となったと発表した。営業利益も約26~27億円となる可能性があり、移転前となる19年の9億5000万円から大幅に伸びることとなる。

 問題は、この来場者数や営業収益をどれだけ維持できるかだ。チームは23年シーズンも最下位で、いくら球場が良くてもチームが強くなければファンはついてこない。球団としてもシーズンオフのストーブリーグでオリックスの山﨑福也投手をFAで獲得。元日本ハム所属の鍵谷陽平投手(元巨人)らも獲得(育成契約)し、戦力強化を進めている。一部では「24年シーズンは本気だ」との声もあり、来年の戦い方にも注目したいところだ。

札幌ドーム担当者「ドーム側から球団側に提案」

 では、今回明らかになった札幌ドームでの日ハム戦開催は、札幌ドーム側が日ハムに「助けを求めた」ことで実現したのか。もしくは「日本ハム側が手を差し伸べた」のか。本稿記者はまず札幌ドームに取材を行った。担当者に新モードについて聞くと、内容は明かさなかったが「今後、イベントを企画している」と回答した。また、日ハムの札幌ドームでの試合開催については次のように回答した。

「札幌ドームでは昨年も日本ハムの試合を開催している。今年も札幌で野球を見られないかということで、ドーム側から日本ハム側に提案した」

 ドーム側から提案したというのは事実だった。なお、球団側からは締め切りまでに回答はなかった。エスコンフィールドと札幌ドーム。どちらも24年は真価が問われる年になりそうだ。

(文=小林英介)

小林英介/ライター

小林英介/ライター

ライター。1996年北海道滝川市生まれ。業界紙記者として働きつつ、様々な媒体でも活動している。

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