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札幌ドーム担当者への取材で「深すぎる苦境」浮き彫り…エスコンとの明暗が鮮明

文=小林英介
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北広島西口で建設が進む建物(今年11月、本稿記者撮影)

「街かい? そりゃ賑わってるよ。数年後には大学も移転してくる。街があまり賑やかじゃ嫌だって人もいるっちゃいるだろうけれど、私はそうは思わないよ。賑わうっていいことでしょ」

 北海道北広島市。JR北広島駅前の道ばたで、とある60代男性が話しかけてきた。男性はもともと近隣の町で公務員をしており、数年前に退職したという。

「北広島じゃないけれど千歳も今はすごいでしょ。半導体メーカーだかのラピダスが工場を作るらしいし、周りに企業が来るみたいね。札幌圏から北海道全体に賑わいが広がるといいね」

 男性はそう話して立ち去った。

 今年開業した「エスコンフィールド北海道」は、北広島、ひいてはその周辺に大きな好影響を及ぼしそうだ。北広島駅前には商業施設やマンション、ホテルができる予定で、新しい経済圏の形成も見通せる。現地から北広島の今をレポートする。

北広島駅周辺などで進む再開発…商業施設にホテル、サ高住も

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北広公園(今年11月、本稿記者撮影)

 今年11月下旬。本稿記者は北広島駅に降り立った。この日はエスコンフィールド北海道を本拠地とする北海道日本ハムファイターズの試合がないためか、人はまばらだった。西口を出てあたりを見渡す。目の前には建設中の大きな建物が見える。このエリアは「北広島駅西口周辺エリア」と呼ばれ、A地区からD地区まである。A地区には商業施設「tonarie(トナリエ)北広島」ができる予定だ。14階建て施設のうち1~3階が商業フロアとなるため、この部分が「トナリエ」と呼ばれるようになる。4階以上にはホテルなどが入る。

 その建物の左側にある通路を通ると、北広公園が目の前に現れる。ここはB地区で、地上15階建てのマンションなどが入った交流施設を整備する。なおCとD地区では住宅と交流拠点などを整備する見込みだ。

 エスコンフィールド周辺でも再開発が進む。球場近くにはサービス付き高齢者向け住宅「マスターズヴェラス北海道ボールパーク」ができ、来年6月から入居を開始する見通し。住宅を紹介するパンフレットには「ボールパークを愉しもう」の文字があるとおり、ボールパークを思う存分感じたい人にとっては最高の環境となるだろう。

ドーム担当者「日ハムが抜けた穴は大きい」と吐露、苦しい運営

 その一方、昨年まで日本ハムが本拠地としていた札幌ドームは、日ハムに去られた今、どうなっているのか。札幌ドームの広報に取材を申し込んだところ、担当者が応じてくれた。現状、札幌ドームは約10億円を投入した「新モード」の不発もあり、なかなか良い話は聞こえてこない。ドームの担当者はいう。

「新モードを使用したのは、今年開かれたラグビーワールドカップのパブリックビューイングと11月開催の高校生らが参加した吹奏楽パフォーマンスイベントのみ。今後の使用については調整中だ」

 2回しか「新モード」が使われていないと明かした。また札幌ドームの財政面については「札幌市などの試算では赤字予想となっている。今はできるだけ赤字の幅を少なくするよう、努力しているところだ」と強調した。

 では、日本ハムが北広島に本拠地を移転した後、札幌ドームの現場の人々はどのようなことを感じているか。担当者は少し困惑しながら次のようにいう。

「やはり日本ハムがいた影響は大きい。試合は平日もあった。日ハムが抜けた穴は大きいと感じている」

 担当者は「札幌ドームは大きな収容施設であり、全天候に対応できる。今後、いろいろなイベント等を実施するので、ぜひ足を運んでほしい」と呼びかけるが、これは率直な思いなのだろう。

足を運んでもらえるようなイベントが必要、試行錯誤で黒字を目指せ

 マスコミは真新しいエスコンフィールド北海道がある北広島を立て、日本ハムが出ていった札幌ドームを落としがちである。実際に札幌ドームの赤字がもっと継続的に増えてしまえば、今後の運営は厳しいものとなる。「新モード」の状況などから「経営は本当に大丈夫か」と心配する声があがるのは当然だ。ただ、その一方で、札幌ドームは積極的にさまざまなところへ提案をしていくべきだという意見もある。地元関係者が話す。

「見本市や同人誌即売会などの誘致を提案してみてはどうかという声も一部からは聞かれる。札幌ドームは就職イベントなどで使用されることもあるため、このような大規模イベントを開くメリットがあるかもしれない。多少文句が出るかもしれないが、いろいろと企画してみたほうがいい」

 これ以上赤字の幅を広げないためにも、試行錯誤しながらイベントを開き、市民らに足を運んでもらえるようになれば黒字も夢ではないかもしれない。

(文=小林英介)

小林英介/ライター

小林英介/ライター

ライター。1996年北海道滝川市生まれ。業界紙記者として働きつつ、様々な媒体でも活動している。

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