このことを示すのが、日本に上陸したEUのPHEVの車重である。スポーツカーのBMWi8(1490キログラム)を除くと、平均1900キログラムほどである。大きくて重い高級車あるいはSUVがほとんどだ。
これまで、こうした重量車はディーゼルエンジンを載せることで燃費を向上させ、CO2を削減してきた。しかし、これからもディーゼルが使えるかというと、少なくともこれまでの販売台数は確保できない。
大きな理由は2つだ。
ひとつは、PHEVに有利な上記のCO2測定方法である。たとえば、エンジンだけで走るとCO2排出量が210グラム(リッター11キロメートル)のPHEVがあったとする。このPHEVのEVモードでの航続距離が50キロメートルあると、CO2排出量は70グラムとなる。さらに電池搭載量を増やして100キロメートル走れるようにした場合は42グラムである。これにはさすがのディーゼル車も勝てまい。
これまではディーゼル仕様車を増やすことで重量車のCO2排出量を下げてきたが、ディーゼル車は今まで以上に排ガス規制が厳しくなっていくのでコストアップが避けられない。さらに、PHEVは明らかにディーゼル車よりもパワーがあり、乗り心地に優れるので、同等の価格であればPHEVが選ばれるだろう。重い高級車やSUVはますますPHEV化を進めるのではないだろうか。これは、ディーゼル車の行く先に暗雲が広がるということでもある。
ディーゼル車は壊滅か
もうひとつは、排ガス規制の強化である。現在、EUの主要都市のPM2.5濃度は北京、上海並みの高濃度である。各都市は軒並みディーゼル車の市内への進入を防ごうとしており、EUは排ガス規制を強める方針である。
ディーゼル車が強まる排ガス規制に対応するには、エンジンの改良、NOx触媒の改良、DPF(PM除去装置)の改良が必要であり、研究開発費は高騰し、コストも上がり、ガソリン車よりも高いディーゼル車の販売価格をさらに引き上げる。
その上、通勤距離であればEVモードで静かにスムーズに、しかも力強く走れ、乗り心地が良いPHEVの魅力を上回ることはできないだろう。商品性でもディーゼル車は厳しい。
では、ディーゼル車は小型車で生き残れるかというと、小型車でも強まるNOx規制に対応するには、灯油のポリタンク缶ほどの量の尿素水を積まなければならない場合もある。たとえば、この量をマツダのデミオに搭載するのは、かなり難しい。そして、重量高級PHEVの燃費は、思ったよりも良いのである。
(文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表)