ソフトバンクグループは、前副社長のニケシュ・アローラ氏の退職金として68億円を2016年4~6月期決算で計上した。退職金の額は「契約に基づいて決めた」という。68億円の内訳は、株価に基づいて決定される18億円と、支払額が確定している50億円。50億円は7月中に支払った。残り18億円については17年6月と18年3月の2回に分け、その時点の株価を考慮して支払う。
併せてソフトバンクは、14年にアローラ氏に与えた関連会社株式を107億円で買い取った。アローラ氏はソフトバンクの投資先に個人でも投資できる契約を結んでいた。ソフトバンクが投資したインドの通販サイト「スナップディール」とインドのタクシー配車アプリ「オラ」の2社にアローラ氏も投資しており、この2銘柄を買い取った。
14年9月に入社したアローラ氏の報酬額は、15年3月期は契約金を含めて165億円、16年同期は80億円だった。今回の役員退職金68億円と、株の買い取り107億円を合わせるとソフトバンクが支払った総額は420億円に上る。
アローラ氏は孫正義社長の後任候補として招かれたが、6月22日の株主総会後に退任した。在任わずか1年10カ月という短い期間に420億円を支払った。その判断は正しいのだろうか。
アローラ氏の疑惑の数々
アローラ氏の疑惑が噴出したのは今春だ。米通信社、ブルームバーグは6月30日、「米証券取引委員会(SEC)のロサンゼルス事務所の担当者らは、アローラ氏に利益相反や他の疑わしい行為がなかったかどうか、さらにソフトバンクの投資家向け情報開示の状況などを調べている」と報じた。
アローラ氏をめぐっては、ソフトバンクの匿名の投資家グループが1月20日、利益相反行為やインサイダー取引に関与した可能性があると指摘して、取締役の適格性を疑う書簡をソフトバンクの取締役会に提出。ソフトバンクは、取締役会の独立役員で構成する特別調査委員会で調査した。
6月20日、調査の結果、投資家グループの主張は「評価するに値しない」との結論に達したと発表。ところが、アローラ氏は株主総会当日の6月22日付で退任した。ソフトバンクは退任について、投資家の批判とは無関係だとしている。「孫社長が英国の半導体設計大手、アーム・ホールディングス(HD)を3兆3000億円で手中に収めたことに、アローラ氏は反対した」といった情報が流れているが、真偽は不明だ。