女性社外取締役が百花繚乱だ。2015年6月、コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)が導入され、独立性の高い社外取締役を2人以上選任するよう求められたからだ。
時事通信社が東京証券取引所第1部に上場する主要500社を対象に実施した調査(7月21日時点)によると、16年に女性役員を起用した企業は258社となり半数を超えた。女性役員の起用の割合は15年の42%から10ポイント弱増えた。
女性役員の延べ人数は355人と役員全体(7723人)の4.6%で、昨年の3.8%から上昇した。女性役員の内訳をみると、内部昇格は43人と1割強。312人が社外取締役だった。16年に新たに選任された女性社外取締役を紹介してみよう。
伊藤忠商事は前厚生労働事務次官の村木厚子氏
伊藤忠商事は前厚生労働事務次官の村木厚子氏を社外取締役に起用した。異色の官僚だ。東京大学出身者の男性キャリアが多い霞が関の中央省庁の幹部のなかで、高知大学という地方国立大学出身で、さらに厚生労働省では少数派の旧労働省出身であった。
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課長時代に、障害者団体「凜の会」に偽の障害者団体証明書を発行し、不正に郵便料金を安くしてダイレクトメールを発送させたとして09年6月、大阪地検特捜部に虚偽有印公文書作成・同行使容疑で逮捕された。
村木氏は一貫して無罪を主張。10年9月、大阪地裁で無罪の判決を勝ち取った。大阪地検が上訴せず、無罪判決が確定した。この事件は、担当検事が証拠の改竄を行っていたことが発覚し、逆に証拠隠滅の容疑で逮捕されるという事態に発展した。
無罪が確定し村木氏は復職。敵をつくらない典型的な調整型官僚として有能であることが評価され、13年7月から15年10月まで厚生労働事務次官を務めた。
村木氏は16年6月、伊藤忠の社外取締役に就いた。朝型勤務などの働き方改革を進める同社は「労働政策の豊富な経験とともに、女性の働き方の新しいモデルとして期待している」とコメントしている。
NTTドコモは週刊ダイヤモンド元副編集長の遠藤典子氏
NTTドコモは16年6月、遠藤典子氏を社外取締役に据えた。雑誌メディアと大学で幅広く活躍している人材だ。
京都大学大学院エネルギー科学研究科博士課程修了。1994年にダイヤモンド社に入社。週刊ダイヤモンド編集部で流通、IT、エネルギー、国際金融、財政政策、産業政策などを担当、取材・執筆活動を行う。