日本の腕時計メーカーはインバウンド(訪日外国人)需要で大いに潤ったが、現在は様変わりの様相を呈している。
腕時計3社の2015年4~9月期の連結決算は好景気に沸いた。セイコーホールディングス(HD)の本業の儲けを示す営業利益は、前年同期比50%増の113億円に急伸した。価格が40~60万円の主力ブランド「グランドセイコー」や20~30万円の世界初のGPSソーラー腕時計「アストロン」といった高級品、中級品が、訪日客や日本人客に売れた。両ブランドの売上高は5割増えた。
シチズンHDの営業利益は、149億円と21%増えた。全体を牽引した時計部門の利益は31%増の100億円。お土産として需要が高い5万円前後の機械式腕時計や価格が20万円以上の高級品の販売が好調だった。
カシオ計算機の営業利益は、37%増の216億円。「Gショック」など10万円以上する腕時計の販売が国内外で拡大した。Gショック最大の特徴は、どんな衝撃にも耐える堅牢さだ。実際に、戦場へ赴く兵士たちに好まれている。世界の特殊部隊やSWAT隊員にも愛用されており、国内外の軍事マニアから圧倒的な人気を誇る。
だが、爆買いは終わった。インバウンド需要の落ち込みや円高が響き、上記3社いずれも16年4~6月期の連結決算は営業利益が2ケタ減。爆買いが本格化する前の水準に逆戻りした。
セイコーHDの売上高は前年同期比16%減の594億円、営業利益は80%減の8億円。本社移転の経費が嵩み、大幅な営業減益となった。9月13日に発表した17年3月期通期の売上高は前期比12%減の2600億円、営業利益は62%減の50億円と大幅な減収減益を見込む。純利益は、これまでの予想の100億円から70%減の30億円に急減しそうだ。ウォッチ事業の部門営業利益は60億円と、従来予想の120億円から半減する。同部門の売上高は1600億円から1380億円となる。特に10万円前後の中価格帯でも下限の腕時計の落ち込みが激しい。
セイコーHD傘下の高級商業施設、和光は外国人のなかでも富裕層に人気のスポットだが売り上げが落ちており、利益貢献度は大きく下がる見通しだ。
シチズンHDは売上高が8%減の766億円、営業利益は28%減の46億円。17年3月期通期の売上高は8%減の3190億円、営業利益も29%減の215億円と、やはり減収減益を予想する。