中国当局は北朝鮮に核開発関連物資など戦略物資を密輸していたとして、中国東北部・遼寧省の企業グループの女性オーナーを逮捕、取り調べていることがわかった。また、米政府はこの企業グループと同社オーナーらを制裁対象に指定した。米政府が北朝鮮の核・ミサイルなどと関連して中国企業を制裁対象としたのは初めて。
北京の外交筋が明らかにしたところによると、彼女は北朝鮮の市場開拓のため、金正恩・朝鮮労働党委員長の叔父で、すでに処刑されている張成沢・元党政治局常務委員とねんごろな関係にあったとされる。
この女性オーナーは、北朝鮮国境の遼寧省丹東市に本社を置く「遼寧鴻祥実業集団」の馬暁紅会長。馬氏は43歳で、美人でやり手の実業家として知られる。
2000年1月、同市内のデパートの売り子だった馬氏は27歳で起業し、繊維製品の製造・販売会社を創設。得意の朝鮮語を生かして北朝鮮市場を開拓し、アパレル製品の輸出を手掛けて成果を収め、建築資材、化学製品なども輸出するほか、北朝鮮の豊富な地下資源に目をつけレアメタルの輸入など事業内容を拡大。中国内でも一躍、対北朝鮮貿易の第一人者となった。
北朝鮮ナンバー2処刑が影響か
中国政府国務院直属の中国外文局が運営するニュースサイト「中国網」は06年10月、馬氏のことを次のように描写している。
「今年34歳(当時)の女富豪、馬暁紅は丹東で最も成功した中朝貿易業者だ。この一日だけで彼女は2000トンもの重油を北朝鮮に輸出した」
現在ではホテルや飲食店の経営や観光にまで進出し、傘下企業は10社を下らない。同集団はホームページ上で「北朝鮮と世界を結ぶ黄金の橋」とアピールしているほどだ。
その後、北朝鮮が金正恩体制に移行後、核実験や長距離ミサイル発射実験などを頻繁に行うなど対中関係が悪化。国連安保理による対北制裁も強化された。このため、対北朝鮮制裁で輸出禁止となっている核開発に必要な戦略物資や武器などをリンゴ箱に詰めて、内容物を「リンゴ」と偽って輸出。禁輸で困っている北朝鮮の足元を見て1箱を1000万元(約1億5000万円)で売るなど巨利を得ていたという。
このように、馬氏が北朝鮮に食い込むことができたことについて、北京の中朝関係筋は次のように解説する。