「とんがりを失った」ホンダ、完全復活の予兆…過去と決別の「聖域なき経営改革」断行
“チームHonda”の意味
片山 ホンダでは、社長より技術者がエラいといわれたりしますよね。その意味で、責任者を設けることに抵抗はありませんか。
八郷 縦割り組織の弊害には、気を付けないといけません。昔から研究所にマネジメントはいますが、誰もマネジメントには憧れなかった。常務や専務より、LPL(開発責任者)に憧れた。縦割りにすることによって、マネジメントに憧れるようになってはいけない。
研究所は、開発を管理するマネジメント会社であってはなりません。技術、商品をリーディングする組織形態が求められます。
片山 縦割り組織の弊害とは、いわゆる「大企業病」ですね。いかに克服しますか。
八郷 2つのことに取り組みます。ひとつは、より他社と異なる、独自性のある、クリエイティブな商品をつくっていくこと。もうひとつは、効率を高めて土台をつくることです。グローバル車は、効率を追求し、収益を含めて強さを確立し、土台となる。一方で、土台をつくる人も夢をもち、「ホンダっていい会社だな」と思ってもらえるようにしなければいけません。
片山 私は長く自動車業界を見てきましたが、“組織のトヨタ”に対して“個のホンダ”だと思っています。ホンダのブランドが輝くのは、社員の“個”が強いからだと思う。一方で、八郷さんは就任時に“チームHonda”を掲げられましたね。これはどういう意味ですか。
八郷 ホンダには、思いの強い個もいますが、その人に共感し、一緒にやる人達がいないと何もできない。つまり、チームワークです。具体的には、ホンダジェットは藤野道格がトップを務めましたが、当然、藤野ひとりでつくったわけではなく、サポートする人達がいて初めて実現したんです。
野球だって、ひとりじゃできませんよね。メンバーを集める際、各部門から一番いいやつを連れてきてオールスターチームをつくるより、むしろ、いろんな人が集まって「何をするんだっけ」みたいなところから始めるほうが、強いチームができる。リーダー的な人や「個」の強いやつがいるなかで一体感が生まれて、だんだんチームができてくる。全員4番じゃなく、1番も9番もいる。それぞれの特長を生かさないといけないんです。
ただね、こういうやり方だと、面白いことができますが、当然、失敗もある。
片山 その失敗を許容できるかが問われます。
八郷 はい。そのために、土台がしっかりしていなければいけません。