とある日の深夜1時過ぎ、東京都内の山手通りが方南通りとぶつかる清水橋の交差点でのこと。
都内在住の女性は突然、一般道である方南通りを、なんと巨大な地下鉄の車両が走行している光景に遭遇し驚愕。その鉄道車両は大きなトラックに牽引されて交差点を左折し、山手通りを北上していく。彼女はあまりのことに驚き、手元にあったスマートフォンで撮影をしたが、冒頭の写真のようにひどく手ぶれしたものばかり。
のちに撮影した画像を見てみると、銀色の車体にはオレンジのラインが1本。東京メトロを運営する東京地下鉄株式会社のHPで確認してみると、どうやら銀座線を走っている01系と呼ばれる車両のようであった。
なぜ、地下の線路上を走っているはずの地下鉄車両が、深夜の一般道を走っているのだろうか。東京地下鉄株式会社の広報担当者にその理由を聞いた。
深夜1時から4時の間のみ
「方南通りを杉並方向に行くと地下鉄丸ノ内線の方南町駅があるのですが、そのすぐ近くに中野車両基地があります。おそらく、そこから銀座線の上野車両基地への移動のために運搬されていくのを、ご覧になられたのだと思います」(広報担当者)
そこで疑問なのは、線路の上を走れる地下鉄の車両を、なぜわざわざ一般道路を使って運搬しているのかという点だ。
「東京メトロのなかで、丸ノ内線と銀座線の車両はサードレールという方式を採用しています。これは電車のレール部分にもう1本、第3の給電用のレールを入れる第三軌条方式とも呼ばれるもので、車両の屋根部分に給電用のパンタグラフがないのが特徴です。しかし、その分、車輪と車輪の間の幅が他の路線のものよりも大きく、たとえば有楽町線などへの路線の乗り入れができません。そのため、一般道を運搬する必要があるのです」
では、一般道を地下鉄車両が走るのは、珍しいことなのだろうか。
「多いわけではありませんが、しばしばあります。こういった車両の運搬は陸送と呼ばれ、カーブに時間がかかるので深夜1時から4時の間でしか道路の通行許可が降りないのですが、どこから情報が漏れるのか、この陸送の写真を撮りに来られる鉄道ファンの方も多くいらっしゃいます。今年の7月には、かつて丸ノ内線を走行していた500系という車両を一度売却したアルゼンチンの地下鉄運営会社から買い戻し、大黒ふ頭から中野車両基地に陸送した際も、多くのファンが集まって話題となりました」(同)