規制改革推進会議(議長:大田弘子政策研究大学院大学教授/以下、規制会議)は9月12日、首相官邸で安倍晋三首相出席のもとで第1回会合を開催した。そこで、農業分野の規制改革を目的とする「農業ワーキング・グループ」とともに「行政手続部会」が設置された。この行政手続部会は政令改正により設置されたもので、極めて重い位置づけとなっている。
では、この行政手続部会は何をするのか。規制会議の決定文書を見ると、次のように計画的な取り組みを推進するとされている。
「まずは、外国企業の日本への投資活動に関係する規制・行政手続きの抜本的な簡素化について一年以内に結論を得る」
「外国企業の日本への投資活動に関係する分野以外についても、先行的な取り組みが開始できるものについては、年内に具体策を決定し、速やかに着手する」(「日本再興戦略2016」より)
要するに、外国企業の日本への投資活動に関係する分野と、外国企業のそれ以外の分野における規制・行政手続きの抜本的な簡素化を推進するということになる。これは、外国企業の日本でのさまざまな活動における規制・行政手続きの規制緩和を進めることを意味しており、極めて広範なものとなる。
例えば、外国企業の医療参入、共済の保険と同等の競争条件の整備、遺伝子組み換え食品表示をはじめとする食品表示規制、食品添加物規制をはじめとする食品安全規制、医薬品規制、農地所有に対する農地法規制、私鉄や地下鉄への参入規制なども想定される。
TPP協定第25章
では、なぜ今、規制会議がこうした外国企業のための規制改革に乗り出したのか。
そこには、TPP(環太平洋経済連携協定)第25章「規制の整合性」が影響している。TPPの理念は、関税及び非関税障壁の撤廃にある。そのうち、非関税障壁の撤廃に関連するのが、同条項である。
同条項は、「締約国間の物品及びサービスの貿易並びに投資の増大を円滑にすることについて、規制の整合性を通じてこの協定の利益を持続させ、及び増大させること」(第2条)を目的としている。要するに、各国の規制緩和を進めることによって、物品及びサービス貿易と投資の増大を図るというもので、非関税障壁の撤廃と理念は同一である。