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USJ、本気のディズニーL撃墜計画始動…異常な安値買収の真相、外資株主は巨額利益

文=編集部
USJ、本気のディズニーL撃墜計画始動…異常な安値買収の真相、外資株主は巨額利益の画像1ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(「Wikipedia」より/Rebirth10)

 秋から冬の株式市場は、「再上場」に熱い視線が注がれている。今後、株価上昇は期待できないと判断した投資ファンドが、投資を回収する出口戦略のラストチャンスと焦っているのだ。

 大阪市にあるテーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を運営するユー・エス・ジェイは、東京証券取引所に再上場を申請する。東証の審査が順調なら、今年度中にも上場できる見込みだ。

 昨秋、米ケーブルテレビ大手コムキャスト傘下に入った直後、一度は上場を先送りしたが、株式市場から大型施設の建設費用を調達して、国内外からさらなる集客を狙う。

 再上場に合わせてUSJに出資してきた投資ファンド、MBKパートナーズとゴールドマン・サックス証券系のファンドは、保有する株式を売り出す。一方、コムキャストは保有株を売却しない。ここがポイントだ。

 USJは2001年に開業。運営会社のユー・エス・ジェイは大阪市が過半数を出資する第三セクターだった。オープン初年度は1103万人の来場者があった。その後は客足が伸びず、巨額借入金の返済負担から経営が悪化。05年にゴールドマン・サックスグループを引受先とする250億円の第三者割当増資を行って危機を乗り切った。07年3月に東証マザーズに上場した。

 しかし、08年9月のリーマン・ショックで株価が急落するなか、ゴールドマン・サックスはTOB(株式公開買い付け)を実施。買い付け価格は時価を25%上回る1株5万円で、大阪市や日本政策投資銀行がTOBに応じ、ユー・エス・ジェイは上場廃止となった。ゴールドマン・サックスは、おおよそ1100億円を投じた計算だ。再上場に際して、投資分をいかに効率的に回収するかに視線が注がれている。

ハリポタ効果で業績は急回復

 14年7月の「ハリー・ポッター」エリア開業がUFJの大きな転機となった。入場者が急増し、ハリポタ効果で15年3月期の売上高は1385億円、営業利益は390億円と2年連続で過去最高を記録した。業績が復活したため、ゴールドマン・サックスは再上場による出口戦略の検討に入った。

 株式市場では、「ユー・エス・ジェイが再上場すれば時価総額は7000億円を見込める大型IPO(新規株式公開)」と見ていた。

 ところが、15年9月28日、米ケーブルテレビ大手のコムキャストが、ユー・エス・ジェイを買収すると発表した。コムキャスト傘下のNBCユニバーサルが11月、ゴールドマン・サックスなどから発行済み株式の51%を1840億円で買収した。これに伴い、ユー・エス・ジェイは、15年中に予定していた上場の申請を中止した。

 市場関係者たちを驚かせたのは、1840億円という買収価格だった。株式の時価総額が7000億円と期待されているユー・エス・ジェイが再上場したときに得られるはずの上場益に比べると、買収価格があまりに安かったからだ。

 コムキャストは、単なるケーブルテレビ会社ではない。全米3大テレビの一角であるNBCと、6大映画会社のひとつであるユニバーサル・スタジオを傘下に収める全米最大級の総合メディア・グループである。

 日本のUSJは、米ユニバーサル・グループ各社からライセンスの供与を受けて運営されている。したがって、ユニバーサル・スタジオは世界戦略の一環としてユー・エス・ジェイを買収するわけだ。

 コムキャストは、割安な価格でゴールドマン・サックスグループなどから株式を手に入れた。その見返りがユー・エス・ジェイの再上場なのだ。49%の株式を保有するゴールドマン・サックスグループとMBKパートナーズには、上場によって多額の上場益が転がり込んでくる。

 USJに投資した外資の出口戦略は2段階方式であったことがわかる。第1段階は保有株式の半分をコムキャストに安値で売却すること。その上で、株式上場の際に残り半分を高値で売り抜けることが担保されたわけだ。コムキャストという大きなバックを得たUSJの株価は一段と高くなると見越した第2段階なのだ。コムキャストとゴールドマン・サックスの双方が利益になる出口戦略が練られたことになる。

USJの入場者数は東京ディズニーシーを抜いて世界4位に浮上

 コムキャストにとって、本国を上回るUSJの集客力は垂涎の的だった。

 米テーマエンターテインメント協会の調べによる15年の世界のテーマパーク入場者数ランキングによると、ハリポタ効果で入場者が急増したUSJが躍進した。

 1位はウォルト・ディズニー・ワールドのマジックキングダム(米国)、2位はディズニーランド(米国)、3位は東京ディズニーランド(前年比4.0%減の1660万人)。ベスト3に変わりはないが、4位はUSJ(同17.8%増の1390万人)だった。東京ディズニーシー(同3.5%減の1360万人)を抜き、5位から4位に浮上した。

 コムキャストの買収後に就任したジャン・ルイ・ボニエ最高経営責任者(CEO)は、「今後4年で来場者を今の1400万人から、200~300万人上乗せしたい」と語っている。株式上場によって得た資金で、大型アトラクションに投資して、入場者数を1600万人から1700万人に増やし、東京ディズニーランドに肉薄する計画を立てているのだ。

マクロミルの再上場時の時価総額は1000億円か

 インターネット調査会社のマクロミルも、近く東証に再上場を申請する。マクロミルは14年4月、米ファンドのベインキャピタルが買収し、東証1部から姿を消した。ベインキャピタルはTOBを実施し、買い付け総額513億円で全株を取得した。

 買収直後に電通子会社の電通マーケティングインサイトの株式51%を取得して子会社にし、電通マクロミルインサイトに商号変更した。これを皮切りに海外でのM&A(合併・買収)を強化。買収前の13年6月期に171億円だった売上高は、15年6月期には287億円と1.7倍に急拡大した(16年6月期は未開示)。

 マクロミルが上場すれば、時価総額は1000億円近くの大型案件になると予想されている。513億円で買収したベインキャピタルは巨額の上場益を手にできる。
(文=編集部)

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