韓国経済に、いよいよ「終わり」が見えてきた。
まずは、サムスン電子だ。8月にアメリカや韓国で発売されたスマートフォン「ギャラクシーノート7」が発火問題でリコール後、生産・販売停止になったことは、すでに広く報じられている。
携帯電話が大規模な改修を行う際には、電波や無線などに関する利用許可を再度クリアする必要がある。いわゆるグローバルモデルの場合は、それぞれの国で再び取得することになるわけだ。当初は、原因と見られていたバッテリーの交換によって問題は収束すると思われていたが、交換後の製品でも発火が起きており、バッテリー以外にも不具合があった可能性が高い。
これによって、サムスンのフラッグシップモデルは年末商戦から姿を消した。アメリカの小売業は11月下旬からクリスマスまでの約1カ月で、年間の約3分の1を売り上げるともいわれており、サムスンにとっては大きな痛手に違いない。また、アメリカでは8月末から新学期が始まるが、サムスンはその商機も逃したことになる。新型スマホが新学期と年末という2大商戦で売れないという大失敗を犯してしまったわけだ。
これは、サムスンおよびギャラクシーのイメージを大きく毀損することになった。さらに、アメリカではサムスン製の洗濯機が爆発する事件が複数起きており、米国消費者製品安全委員会が警告を発している。サムスンの洗濯機といえば、13年にはオーストラリアで爆発事故が相次いでリコールを実施しているが、その二の舞いになりかねない状況だ。
米ファンドが狙うサムスンの分割
サムスンの売り上げは韓国の国内総生産(GDP)の20%以上を占めるといわれるが、その収益の約70%を稼いでいるのが携帯電話事業だ。そのため、今回のノート7の問題およびサムスンの凋落は、韓国経済全体の悪化に直結するものといえる。
また、サムスンを成長させてきたイ・ゴンヒ会長は健康問題で床に臥しており、実質的にリーダー不在という問題もある。同時に、相続の問題も発生するなど、サムスン内部は混乱を極めているのが実情だ。
さらに、今回の騒動に乗じて、米ファンドのエリオット・マネジメントがサムスンの企業統治構造を「不必要に複雑」と批判、持ち株会社と事業会社に分割し、事業会社は米ナスダックに上場することなどを提案している。
これまで、サムスングループは外資に資本を握られつつも、循環出資などによって創業一族がグループ全体を支配する構図を維持してきたが、いよいよハゲタカが食いついてきたわけだ。仮にサムスンが分割されれば一族の影響力は一気に低下すると同時に、韓国企業としての位置付けも失う可能性がある。
ノート7の問題は、今まで隠されてきたサムスンの暗部を明るみに出したといえるだろう。
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