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世界シェア2割でも破綻のサンデン、主力の黒字事業売却の“間違った選択と集中”がアダか

文=編集部
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サンデン HP」より

 私的整理の一つである事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)による経営再建を目指す、自動車エアコン用コンプレッサー(空気圧縮機)を製造するサンデンホールディングス(HD、東証1部上場)と関連会社4社は7月14日、第1回債権者会議を都内で開いた。全取引金融機関から借入金約800億円の返済について一時停止の同意を得た。対象債権者は金融機関およびリース会社で合計十数社。停止期限は債権者会議の終了までとなっている。

 群馬銀行とみずほ銀行から再建までのつなぎ融資として、計80億円規模の資金支援を受けることも決まった。会社側は企業や投資ファンド10社程度が“受け皿”となることに興味を示していることを明らかにした。スポンサー企業を決め、年末までに事業再生計画を策定。2回目以降の債権者会議は11月6日、12月11日に開催する予定で12月中の終結を目指す。

 サンデンHDの20年3月期末時点の連結ベースの負債額は1648億円。うち金融債務(長短借入金、社債、リース債務)は1104億円。スポンサー企業の支援のもと、どの程度の債権カットで金融機関と合意できるかが焦点となる。主力行の群馬銀行はサンデンHDとその子会社に対する債権は166億円にのぼると発表。ぐんぎんリースのリース債権は5億円ある。

 サンデンHDは6月30日、事業再生実務家協会に事業再生ADRを申請し、受理された。新型コロナウイルスの影響により欧州やインド、中国などで都市封鎖が行われ、自動車の生産が激減。同社の部品生産は5月中旬に再開されたが工場の稼働率は6~7割と低迷していた。景気の本格的な回復がいつになるか見通せないため、事業再生ADRを申請した。

 事業再生ADRは過剰債務に悩む企業の問題を解決するために生まれた制度。裁判所を通さず銀行と話し合うため、民事再生法といった法的整理より早期の再建が可能だとされる。

 山本一太群馬県知事は「サンデンは本県を代表するものづくり企業の一つで、雇用や下請けの面でも大きな影響があり、心配している」とコメントし、「雇用の維持や地元協力企業との取引継続を期し、事業再生に取り組んでほしい」と要望した。

今年の上場企業破綻の第2号

 サンデンHDの2020年3月期の連結決算の売上高は前期比25.2%減の2048億円、営業損益は34億円の赤字(19年3月期は8億円の黒字)、最終損益は22億円の黒字(同230億円の赤字)だった。新型コロナウイルスの感染拡大で欧州や中国などの工場が休業し販売が急減。子会社のサンデン・リテールシステムを売却したことも売上高の減少につながり、4期連続の減収となった。自動車機器の営業損益は53億円の赤字に転落したが、流通システム事業のそれは22億円の黒字。切り離した事業が黒字で、「選択と集中」で残した事業が赤字という皮肉な結果となった。

 リストラに伴う早期割増退職金など構造改革費用134億円を特別損失として計上。一方、子会社のサンデン・リテールシステムの売却益254億円を計上したため、最終黒字を確保した。配当は無配。21年3月期の業績予想は未定とした。決算短信に初めて「継続企業の前提に関する注記(GC注記)」を記載した。決算発表と同時に事業再生ADRを申請した。

 今年に入ってからの上場企業の経営破綻は2社目だ。5月15日に、東証1部上場の名門アパレル会社、レナウンが民事再生法を申請した。レナウンも直近決算で初めてGC注記を掲載した。コロナ感染拡大によるGC注記掲載企業からレナウン、サンデンHDに続く上場企業の破綻が出てくることは避けられない。

虎の子の冷蔵ケース事業を投資ファンドに500億円で譲渡

 サンデンHDは群馬県伊勢崎市に本社を置く電機メーカーグループの持株会社。独立系自動車部品メーカーとして群馬から飛躍した地元を代表する企業だ。カーエアコンの中核部品であるコンプレッサーで2割の世界シェアを握り、独フォルクスワーゲン(VW)や独ダイムラーなど欧州勢を主力顧客とし、中国などでも事業を拡大してきた。

 主要取引先の欧州自動車メーカーの不振の影響を受け、近年は業績が振るわなかった。売上高の4割を占める欧州では、排ガス規制が強化されてガソリン車向け空調部品の受注が激減。さらに、米中貿易摩擦で中国の自動車市場が低迷。インドも景気停滞や金融機関の貸し渋りで市場は縮小した。米国の経済制裁を受けたイランからは撤退した。

 19年5月に経営トップに就いた西勝也社長は思い切った構造改革に着手した。自動車機器に次ぐ柱だった流通システム事業の売却を決断し、社内外を驚かせた。19年10月、コンビニエンスストアの冷蔵ケースや自動販売機などを手掛ける流通システム子会社のサンデン・リテールシステム(群馬県伊勢崎市)の株式のすべてを投資ファンド、インテグラル(東京・千代田区)に売却した。株式や貸付債権などを含む譲渡額は500億円。流通システム事業の19年3月期の売上高は694億円。全社売上の4分の1を占めた。

 セブン-イレブン・ジャパンやファミリーマートなどのコンビニには、サンデン・リテールシステム製の冷蔵・冷凍ケースが置かれ、それぞれ3割のシェアがある。自動販売機も世界3位シェアを誇っていた。コンビニで本格的なカフェラテを飲めるようにしたのもサンデン・リテールシステムの製品だった。

 サンデン・リテールシステムを切り離した西社長は、「23年度までに世界で従業員の2割にあたる2400人を削減。中国3カ所の工場も閉鎖する」ことを骨子とした構造改革をまとめた。だが、コロナの一撃で「選択と集中」は吹き飛んだ。

(文=編集部)

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