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手島直樹「マーケット・インテリジェンスを磨く」

武田と日立、なぜ容赦なき事業売却を加速?買収より「ノンコア事業」売却を優先すべき

文=手島直樹/小樽商科大学ビジネススクール准教授

事業ポートフォリオの最適化を定期的に実施する

 日本の上場企業の手元資金が100兆円を超える現在、この盤石な財務状況を活用し日本企業が買い手となる機会は一層増加すると考えられます。実際、数百億円、数千億円規模のM&A投資枠を設定する企業が少なくありません。

 しかし、企業は買い手になる前に事業ポートフォリオを客観的に分析する必要があります。PMIの失敗などが原因となり期待されたシナジーが実現できない事業もあれば、コモディティー化(汎用化)し収益性が悪化している事業もあるはずです。バフェットが言う「アマチュアのような事業」が事業ポートフォリオに存在するのであれば、M&Aの前にそうした事業への対応を優先すべきです。

 企業価値を創造するためには、事業ポートフォリオは「旬」なものだけで構成される必要があります。そのために、5年や10年といった中長期的なスパンで事業の可能性に基づき「保有」と「売却」の判断をする必要があります。拡大と膨張は似て非なるものなのです。M&Aで企業価値の創造を目指すのであれば、良い買い手であるだけでなく、良い売り手でもなければならないのです。
(文=手島直樹/小樽商科大学ビジネススクール准教授)

手島直樹

手島直樹

慶應義塾大学商学部卒業、米ピッツバーグ大学経営大学院MBA。CFA協会認定証券アナリスト、日本アナリスト協会検定会員。アクセンチュア、日産自動車財務部及びIR部を経て、インサイトフィナンシャル株式会社設立。2015年4月より現職。著書に『まだ「ファイナンス理論」を使いますか?-MBA依存症が企業価値を壊す』(2012年、日本経済新聞出版社)、『ROEが奪う競争力-「ファイナンス理論」の誤解が経営を壊す』(2015年、日本経済新聞出版社)、『株主に文句を言わせない!バフェットに学ぶ価値創造経営』(2016年、日本経済新聞出版社)。

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