「すいません、クレジットカード使えますか?」
乗客にこう問われると、多くのタクシードライバーはテンションが上がる。クレジット客の大半は長距離客であり、深夜ともなれば「万収(1万円以上の乗客)いただき!」だからだ。
しかし、中にはクレジット利用を喜ばないドライバーもいる。「クレジットカードの手数料は運転手負担とする」会社のドライバーがそうだ。その負担額は5~8%とのことで、たとえば1万円の乗車料金をクレジット払いにした場合、そのドライバーは500~800円の手数料負担を余儀なくされる。
こうした仕組みの会社は中小に多く、会社側は「長距離客を乗せたんだから、それぐらい払え」という考えで水揚げ(1日の売り上げ)から天引きしているわけだ。
このように、タクシー業界は何かにつけて「給与からの天引き」が多い業界である。そして、タクシー台数の少ない小さな会社ほど、その傾向が強いという。たとえば、事故の際の負担金もそうだ。中小に勤めるドライバーは、こう語る。
「うちの会社はアコギでね。接触事故を起こしてボディがへこむとするだろ。すると、運転手に弁済金として修理費用の2割を負担させるんだ。『たかが2割』と思うかもしれないけど、修理費用が25万円なら弁済金は5万円にもなる。過失割合が五分五分の事故でもそれぐらい取るんだから。いちいち念書を書かせて『毎月5000円の10回払い』とかでね」
このドライバー、就職の際に「会社のルールに従います」という誓約書に印鑑を押していた。月5000円なら「まぁ、いいか」と思えるため、仕方なく念書にもサインしたそうだが、納得できないのは「事故処理方法」にあるそうだ。
「当然、新品のボディに取り替えると思いきや、駐車場に放置されている中古車のボディと交換するんだ。つまり、部品代はタダなんだよ。しかも、修理費用の見積もりすら見せない。事故負担金なんて、適当なものなんだ」
最近は求人広告で「事故負担なし」を強調する会社が多いが、これも事故を起こした際に負担金を支払うことに嫌気が差すドライバーが多いからだ。
車上荒らしに遭っても運転手が「弁償」
それだけではない。この会社の場合は車上荒らしに遭っても「物損金」の支払いを命じるそうだ。